君が愛を語れ 03

 向かっていた正面玄関から響いていた銃声と怒号が急に静かになった。先を歩いていたアンディが止まり、後ろ手にBJの動きを止める合図を出す。壁の影から僅かに顔を出し、しばらくしてすぐにまた隠れる。BJに顔を寄せ、囁き声で言った。
「侵入された。戻る」
 促され、速足で今来た道を戻る。居住区にパティはいなかった。多少危険でも正面玄関方面に逃げたのかもしれないと予想してここまで来たのだが、警備が突破され、内部に武装勢力が入り込んだ以上、近づくことができなくなった。
「他に心当たりは?」
「あの子が行きそうな場所──食堂、ランドリー」
「走って」
 不意にアンディが厳しい声で言い、反射的にBJは指示に従った。すぐに背後から「三人行け」と緊迫した声が聞こえ、なぜか自分たちに気付いているのだと直感する。
「どういうことだ」
「監視カメラは?」
「モニタールームか」
 侵入と同時にすぐさま邸内の監視カメラを全て抑えられたということになる。これではどこに逃げても居場所を知られてしまう。皮肉なことだがパティを見付けるのは彼らの方が早いだろう。いや、待て──BJは走りながら必死で考える。待て、あの子は頭がいい。
「こっちへ」
 BJは自分の部屋には監視カメラがないと知っていた。アンディを誘導し、室内に飛び込む。だが部屋に入った姿をモニタールームで見られているはずだ。案の定、足音と揺れる銃器の音が聞こえる。アンディと共に寝室に移動しながら考える。とにかく考える。あの子が得意なのは? かくれんぼ。どこに隠れる? 鬼に見つからないところ。私が見付けられなかったのは?
「──分かった」
「ベッドの下に」
 突然のアンディの指示通り、BJはベッドの下に滑り込む。同時にメインルームのドアが開かれた音が聞こえる。ベッドの下から僅かに覗くと、銃を構えたアンディがメインルームから続くドアの横に立つ姿が見えた。
 そしてドアが開いた瞬間にそれは始まった。アンディが一発、入った瞬間の男の眉間を撃ち抜く。BJは敢えて生命の行方を考えなかった。
 安いアクション映画のように怒鳴り合いながら銃を乱射して戦うわけではなかった。一人目を片付けたアンディは背後に続いていた男にその死体を突き飛ばし、同時にもう一度発砲し、二人目の左目を撃ち抜いた。それでも最後の力を振り絞った男がやはり発砲し、アンディが身を捩った瞬間、三人目がアンディを射程に入れる。
 だが三人目が短い声を上げ、銃口がぶれた時、銃を捨てたアンディが飛びかかった。メスを投げて三人目の動きを乱したBJは目をきつく閉じる。三つの生命の行方を考えたくなかった。
「先生」
 アンディが囁き声で呼んだ。
「みんな気絶させただけ。後で起きる。大丈夫だよ」
 三人目を絞殺した特殊部隊員の優しい嘘に、BJは無言で頷き、目を開けて、転がる男たちを眺めた。確認するまでもなかった。死んでいた。アンディは無言で男たちの身体を探り、持っていた短機関銃と弾倉を奪う。確認するように一度構え、それから自分の拳銃をスーツにしまった。
「よう、借りるぜ」
 死体に話しかけたのは優しい嘘の仕上げだった。優しい嘘に応えるため、BJは言った。
「パティがいる場所が分かった」
「──どこ」
「その前にモニタールームを何とかしたい。見付ける前に追い付かれる」


 フォート・デトリックに到着したのは相当数の陸軍兵だった。グラディスが無線で話し続けること数分、キリコに向かって「僕は行く」と告げる。
「行くって?」
「ホワイトハウス。ここの警備と監視は当面、今着いた中隊に引き継いだ。ドクターには後で話を聞くことになると思うけど、よろしく頼むよ」
「ホワイトハウスはどうなってる? 大統領は?」
「まだ副大統領の就任宣言が出てないから無事だろ。ドクターの女は知らないけど」
 キリコは内心の舌打ちを隠し、頷いた。自分が行ってもできることがあるとは思えない。しかしあの女がいる。無事なのかどうか。悪運に恵まれた女だ、無事のはずだ──そう思いたかった。
 その時、また無線が反応する。聞いていたグラディスが明らかに怒気を含んだ声で「ぶっ殺す」と言った。それからキリコを見た。
「炭疽菌のワクチンってある?」
「存在そのものか、フォート・デトリックと言う意味か、このフロアと言う意味か、在庫の有無の意味か?」
「全部」
 事態を予想したキリコは頷いた。
「ワクチンは存在する。炭疽菌はセーフティレベル3、フォート・デトリックにあるとしても別のフロアになる。ワクチンの在庫の有無は知らない」
 グラディスは無言で短機関銃を研究員たちに向けた。彼らは悲鳴を上げた後、あります、と口々に叫んだ。
「まさかレベル4を囮にするとはな。ホワイトハウスの連中と同じ奴か?」
「知らないけどさ。してやられたのは事実だね。──デルタフォース、軍籍番号奇数は至急ホワイトハウスへ。偶数は危機管理センターに急行して副大統領の指示に従え。閉鎖前に出て行った奴が炭疽菌を持ち出した可能性が高い。炭疽菌を見付けたら飲み込め、ワクチンはあるから心配するな」
 笑えない冗談で無線を終えたグラディスに、キリコは苦笑しながら申し出てやった。
「セーフティレベル3に入るには準備がいる。俺なら慣れてるからすぐに取って来てやれるぞ」


 アンディの提案に呆れたが、それしかないということも分かっていた。アンディの案はシンプルで、そして危険だが、受け入れざるを得ないものだった。モニタールームに移動しながら監視カメラを撃ち抜いて行く。ただそれだけだ。すぐに追手が来ることは分かっていたが、逆に言えば追い付かれるまでは時間がある。
「モニタールームの方面にはそこまで連中が集まってないと思う。賭けだけど」
「理由は?」
「侵入者の数。20人として、軍が来る正面玄関と屋上の監視に回す。俺ならそうする。モニタールームは監視役の奴と、精々護衛が2人くらいしか回せない。あいつら、人数が足りないんだ」
 だからこそ、とアンディは続けた。
「あいつら、パティが必要なのかもしれない」
「どういうことだ」
「大統領と何かを交渉するなら最強の交渉材料だ」
「──なるほどね。私もでもそうするよ」
 殺されていない可能性にも気付いた。不安と安堵が一気に押し寄せ、感情を宥めるために大きく息を吐く。遠くにヘリのモーター音が聴こえた。来た、とアンディが呟いた。ようやく軍が到着したのだ。
「連中、あっちに集中するはず。今のうちだ」
 そしてBJはSAS隊員の射撃能力に感嘆することになる。


 パティは口を抑え、しゃがみこんで震えていた。お母様に会いたい、お父様に迎えに来て欲しい、口から出掛ける救いの願望を、幼い少女は年齢からは考えられないほど強い意志力で抑え込んでいた。
 非常事態への訓練は頻繁に行われていた。パティもよく分かっていた。いつも一緒にいてくれる担当SPの言うことに従って、両親と合流して核シェルターに行く。それだけのはずだった。だがSPに手を掴まれた瞬間、そのSPが先ほどまで一緒にいてくれたはずの担当者ではないと気付き、手を振りほどいて逃げた。
 すぐに追いつかれそうになったが、結果として今ここに一人でしゃがみこんでいる。光が差さない暗い場所で、一人きりで泣き声を堪えるしかない。遠くで恐ろしい音が聞こえていた。
「──!」
 不意に背後から口を抑えられ、恐怖の余り身体が引き攣る。だがすぐに清潔な──パティの幼い語彙ではそうとしか言えない、医療従事者独特の──香りが鼻腔に入り込み、次は安堵の余りに涙が出た。
「やっぱりかくれんぼが上手ね、パティ」
 優しい日本語訛りの英語が耳元で囁かれた。頷いてみせると抱き締めてくれた。泣き声を必死で抑えながらも振り返ってしがみつき、先生、と言わずにはいられなかった。かくれんぼをして遊んだ時、BJがどうしても見付けられなかった壁の通路の中で、二人はしばらく抱き合っていた。
 壁の中にもう一人、SPのようなスーツ姿の男がいることに気付き、パティはBJの腕の中で身を強張らせたが、BJが「わたしの友達よ」と囁いてくれたのですぐに安心する。アンディは笑ってみせ、それからスーツのポケットを探り、取り出した小さな機械を耳に装着した。無線だ。持っていたのかとBJが毒づくと肩を竦めた。受信の声が漏れたらまずいからパティを見付けるまで外していたんだよ、という説明は後からすることにし、無線に向かって小さく囁いた。
「──発信。日本人女性一名、米国人少女一名、確保。怪我なし。指示を」
 アンディはしばらく無線の向こうの声に耳を澄ませていたが、やがて無線を切り、もう一度パティに向かって微笑みかけた。
「俺はアンディ」
「パティよ」
「よろしく。かくれんぼが上手なんだね、素敵だよ」
 囁き合いながらも自己紹介を終え、アンディは本題に入った。
「ちょっと冒険だ。なんにも怖くないよ。先生と一緒にお家を出て、お父様とお母様が帰って来るまで待っててくれる?」
 BJはアンディを見る。アンディはBJに頷いた。
「ローズガーデンに繋がってる抜け道があるって。そこからパティと出て。ローズガーデンは米軍が抑えてるから安全だって隊長が言ってる」
 無線の相手は核シェルターにいる隊長だったようだ。外の様子が分かるということは、核シェルターから外部の様子が確認できるという意味に繋がる。今の状況にはかなり心強い事実だった。
「アンディは?」
「うちの首相の警備に戻るから、抜け道までだ」
「でも」
 アンディはパティに聞こえないよう、BJの耳元にぎりぎりまで唇を寄せた。
「連中の仲間の可能性が高いんだけど、フォート・デトリック──研究所だっけ? そこから炭疽菌が持ち出された。どこにあるか分からない。もうホワイトハウスに入り込んでる可能性がある。今、ワクチンを持ってデルタフォースとドクター・キリコがこっちに向かってる」
 息を呑んだBJの反応に驚いたパティが不安げに顔を上げる。BJは急いで笑顔になり、さあ行きましょうと囁いた。
 炭疽菌には複数の種類がある。無害な種類もある。だが致死率が高い生物兵器に転用できるのも確かだった。フォート・デトリックから持ち出されたとなると、確実に有害な種類であるはず──予想したBJは、キリコがワクチンを持って来るのであれば、少なくとも死神が人を殺すためにフォート・デトリックにいたのではないと信じることができた。ただ、なぜ外部の人間にワクチンを持たせたのか。それが不思議だったが、今はそれよりもパティを安全な場所へ移すことに意識を集中させるべきだと思った。


 ホワイトハウスに急行する危険物質搬送車の中で、グラディスが煙草を吸いながら無線で話している。大声で復唱するのは他の隊員とキリコに聞かせるためだ。搬送車だって禁煙だろうがよ、と思いながらキリコは溜息をついたが、周囲にいた隊員たちがキリコの表情に気付き、ごめんな、というように肩を竦め、これはいつもの光景なのだと教えた。
「大統領と夫人と英国首相が核シェルター、無事確認。それから? ──ローズガーデン確保? 正面玄関は? 抜かれた? 馬鹿、死ね。はい次──武装勢力の正体、目的、いまだ不明。役立たずども、死ね。了解。はい次。危機管理センターからの連絡を待つ。はい次。──ああそう、大統領の娘の生存確認ね。まだ脱出してない? 日本人の女といる? ドクター、生きてるってさ! ──はい次、制空権──ああそう。次──」
 余りにも流れるように言われたので聞き逃すところだった。しかし理解すると同時に深く溜息をつき、意識せずに「神に感謝を」と呟く。信仰熱心ではないのだが、今はそれ以外の言葉が見つからなかった。日本で待つあの小さな女の子に哀しい連絡をしなくて良いのだと言う事実に、ただただ安堵する。
「──は!? 何言ってんの!? 死ね!」
 不意にグラディスが怒鳴った。こいつは気が短いんだな、とキリコは実感した。フォート・デトリックにいる時からやたらと怒っているような気がする。
「SAS!? そんなもん勝手に入れてんじゃないよ、クソッタレ! 殺すぞ!」
「SASかよ!?」
「ブリテンのチキンが!」
「ざっけんなコラァ!」
 英国特殊部隊の名を聞いた途端、今までグラディスを「仕方がないなあ」といった目で見ていた隊員たちが一斉に殺気立ったブーイングを挙げ、キリコを唖然とさせた。だがすぐに、自国の危機に他国の特殊部隊が無断で関わったことが面白くないのだと気付く。遠い記憶でも、規模は違えど確かにこんな衝突があったなとキリコは妙に懐かしくなった。


 モニタールームの電源を破壊したからと言って安全が確保されたわけではない。邸内を慎重に移動する必要があった。幸い、ローズガーデンの方向はBJもパティも分かっている。BJに抱かれたパティはおとなしく、一言も喋らなかった。医療鞄とパティの重量がBJの動きを制限せざるを得なかったが、まだローズガーデンの方向には武装勢力の影がなかった。アンディの訓練された先導で歩き続ける。
 先に無線で指示されていた道を歩き、地下室への扉を開けると、近代的に整備された狭い通路が現れた。慎重に扉を閉め、そこでBJは思わず息を吐く。かなりの疲労だ。気付いたパティが「降りるわ」と言ったが、もしもこの子がピノコだったらと思うと腕から離す気になれず、駄目よ、と言って抱き直した。優しい子だと思った。
「ここか。上りになるな」
 排気口にも見える小さな入り口を見つけ、アンディは一度覗き込み、急ではあるがしっかりした階段を見付けて安堵する。それから二人を振り返って笑ってみせた。
「二人がスマートで良かった。デブなら逃げられなかったよ」
「セクハラ。──パティ、ここから出られるわ。上には頼りになる人たちがいるから、出るまでは頑張りましょう。これで最後よ。よく頑張ったわね」
「先生も行くんでしょう?」
「──もちろんよ。パティが上まで上がるのを見届けたらすぐに行くわ。さあ、先に上がって頂戴。下を見ちゃ駄目よ」
 アンディはBJを見た。BJは一瞬だけアンディを見た。アンディが何かを言う前に、BJはパティを中に促し、勢いを付けるように背中を押し、数段をまず上がらせた。
 その時、扉の外で明らかに誰かの気配を感じた。アンディが無言でBJを階段の方へ突き飛ばす。下を見たパティにBJは「行きなさい!」と声無く叫び、少女は唇を噛み締め、恐怖の中で涙を堪えながら、全力で階段を駆け上がり始めた。扉が蹴破られ、アンディが短機関銃を発砲したのはその次の瞬間だった。


「ローズガーデンで娘を確保、SASの奴のお節介ね、了解」
 ホワイトハウス前に居並ぶ陸軍が設置したセーフゾーンに到着すると同時に、グラディスが無線に言って交信を終了した。そのまま搬送車を降りて飛び出して行く。
 隊員の一人がキリコに「しばらくこのまま」と言ったので、逆らう理由もないキリコはワクチンが入ったボックスの封を再度確認し、車内で待つことにした。自分がこれを使うとは考えていない。おそらく陸軍の軍医に渡し、自分はお役御免になるはずだ。
 それからようやく、愛している女について考えることを自分に許した。──生きているという報告は聞いた。だが先ほど、グラディスは「娘を確保」としか言わなかった。その前の交信では日本人の女といる、つまりBJがパティを保護していたという情報を耳にしている。
 ──冗談じゃない。おまえも脱出したんだろう? 皮肉なもんだ。こんな映画みたいな展開で、映画みたいなキスしたローズガーデンなんて。
 軍医だったからこそ分かっている。ここで説明を求めても、誰も応じてはくれない。全てが終わるまで、あの女の生存、あるいは死が完全に確認できるまで、部外者である自分にできることは何もない。待つ以外に何もできない。
 予想はしていたが、こんなにも心が乱されるとは。そして同時に気付いた。あの女を愛するまで、自分は随分と長い間、失うことを怯えるような存在を、妹以外に得ていなかったのだと。
 それでも、愛さなければ良かったと思わない自分に満足した。それで冷静になれた。
 ──生きているんだろう。悪運だけは強いクソビッチ。早く顔を見せろよ。キスしてやるからさ。
 車のドアが開き、煙草を咥えたグラディスが顔を覗かせた。
「ドクター、それ持って来て。あと、煙草吸うなら吸い貯めしといた方がいい」
 嫌な予感ははっきりと通達されるまで敢えて思考から追い出し、喫煙欲を満たすために車を降りることにした。


 アンディの傷を医者の目で検分した。その目に気付いたアンディは苦笑し、タダでお願い、と減らず口を叩く。BJは何も言わず、出血部位を確認し、皮膚と筋肉の損傷を確認した。幸いと言うべきか、重要な血管や他の組織には損傷がない。血止めをし、それから低用量のモルヒネ注射を射った。本来なら完全に痛みがなくなる量を射ってやりたかったが、先にアンディが「動ける量で」と強く言ったので、最低限の量しか射てなかった。
 追って来た武装勢力の一人をアンディの短機関銃が薙ぎ払った。正面から向かって来れば、有利なのは待ち構えるSAS隊員に決まっている。だが武装勢力も発砲を忘れるほど愚かではなかった。アンディは肩、そして顔に負傷した。武装勢力の一人が発砲した弾が頬から唇を傷付け、肩からの出血と共にスーツを真っ赤に染めた。
「死にゃあしない」
 真実を告げ、患者を安心させてやる。アンディは笑おうとして失敗し、息を吐いて「そいつは良かった」と言った。BJは頷いて医療鞄から必要なものを取り出して行く。パティはもう脱出できただろうと信じていた。アンディが撃たれたと知った瞬間に、置いて行くことなどできないと思った。
「簡単に縫っておくよ」
「麻酔しないで」
「痛いぞ」
「感覚が鈍って銃が持てなくなる。──本当に口を縫われるなんてね」
 ロンドンで散々キリコに言われたことを思い出し、アンディは笑う。BJも同じく思い出して笑った。
「後で綺麗に縫い直してやる。助けてくれたんだ、タダでいい」
「助かるよ、結構安月給なんだ」
 まずは肩の傷を縫い始める。麻酔をしないままでの縫合は患者に多大な苦痛をもたらすが、アンディは唇を噛み締め、呻き声ひとつ漏らさなかった。先に投与されていた低用量のモルヒネも彼を助けた。
「先生、上へ。脱出してくれ。ドクターももう来る」
「アンディも」
「俺はシェルターに戻る。仕事だから」
「主治医として認められない」
 アンディはBJを睨み付けた。BJもアンディを睨み返した。そしてアンディははっきりと言った。
「もう守れない。ここから先は俺自身の安全を優先しなきゃいけない怪我をしてる」
「だったら一緒に脱出する」
「それはできない。首相を守るのが俺の任務だから、戻らなきゃいけない」
「じゃあ一緒に行かなきゃいけない。言うことを聞かない患者なら、一緒に行って面倒を見てやらなきゃいけない」
 アンディが尚も言い募ろうとした時、再び扉の向こうに気配を感じた。BJはもはやアンディの指示を聞くつもりなど微塵もなく、医療鞄を腕にかけ、怪我をしていない方の腕を自分の肩に回し、そういやこいつは70kgだと思い出しながら立ち上がった。クソッタレ、とプライドを傷付けられた男が呻いた。
 通路の角を曲がった瞬間、背後で爆発音が聞こえた。ローズガーデンへの出口に手榴弾が投げ込まれたのだと、アンディには分かった。これで陸軍の救出部隊が侵入口をひとつ失ったことになる。


 キリコは3本目の煙草を揉み消し、4本目に火を点けた。グラディスがやはり数本目の煙草を咥え、資料を示す。ホワイトハウス内部の設計図だった。門外不出もいいところだ。俺が将来テロリストにならなきゃいいな、とキリコが言うと、グラディスは涼しい顔で、その時は殺してあげるよ、と答えた。
「ローズガーデンの侵入口が爆破された。大統領の娘は脱出済みだから最悪の事態じゃないけど、侵入口が減ったのは痛い」
「他は?」
「正面玄関くらいしかない。連中が完全武装で待ってるのと、地雷なりが仕掛けられてても文句は言えないけどね」
「他の抜け道は? ないのか」
「この騒ぎが収まったら改修工事でもするんじゃないの」
 つまりは「何もない」と言うグラディスの返事に、キリコは今日何度目か考えるのも馬鹿馬鹿しい溜息をついた。
「あとは夜まで待って、上空から入るしかない。ただ、制空権が微妙。正面玄関前にまだ戦闘ヘリが停まってる」
「ホワイトハウス前まで無傷で飛んで来た状況の方が不思議だがな」
「午前中から未確認飛行物体として報告されてたんだ。僕は撃ち落とせって何回も言ったんだけど、なぜか上の許可が出なかったんだよね。なぜか」
 なぜか、と言う単語をいやに強調するグラディスは機嫌が悪そうだ。キリコは無言だったが、彼の気持ちは分かるような気がした。自分にも経験がないとは言わなかった。明らかに自分の進言が正しかったはずなのに、責任問題を気にする上層部の対応が後手に回り、結果として生命が失われる事態になった記憶が左目の奥に確かにある。
「とにかく、悪いんだけどさ。待機だけしておいて。炭疽菌がばら撒かれたらドクターの女が死んじまうからね」
「付き合ってやる気はまだ変わってないんだ。だから俺の女を脅しに使うな。行きたくなくなる」
 身体を重ねたこともないのに自分の女だと認識している存在を、改めて不思議だと思う。そのためにこれから生命を賭けるようなことをするなんて、俺は何て馬鹿みたいなことをしているのかと笑いたくなった。
 報告が上がったのはその直後だった。キリコは無表情を貫き、グラディスが「殺す」と呟く声を静かに聞いていた。
 炭疽菌を持ち出したと高確率で予想されるフォート・デトリックの職員は、既にホワイトハウスに入り、武装勢力の前に堂々と正面玄関から近付いても銃を向けられることすらなく、邸内に姿を消して行ったと言う、遠方から監視していた陸軍兵がかなり前に確認していたという報告だった。
「今頃報告が回ってくるなんて、どいつもこいつも無能ばっかりだ」
「陸軍全体で再訓練したらどうだ」
「ぜひご指導下さい、サー・キリコ」
 忌々しいといった感情を隠さずに吐き捨てたグラディスの肩を叩いてから、キリコは最後の一服のために煙草を咥えた。突入まで間がないと分かってしまった。まだ愛する女の生死すら明確になっていないのに、殺傷力が高いウィルスを止めることだけを考え始めそうな自分が嫌になった。まるで軍人じゃないか、冗談じゃない。そう思った。


 大統領が危機に陥った時、代理として副大統領が全権を移譲される。法律に則ったシステムだ。危機管理センターと呼ばれる場所で対策を検討する副大統領の元へ、ようやくと言えばいいのか、待ち続けた連絡がもたらされた。
 武装勢力からの連絡だった。副大統領は他の閣僚たちと危機感を共有しながら、まずは大統領の生死を知りたいと言った。武装勢力は答えなかったが、遠まわしに「そちらがまずいことをすれば殺す」と告げて来た。副大統領はそれで、大統領が核シェルターまで移動する前に人質になったのではないかと危惧したが、まずは生きているという確信だけでも有り難かった。
 それから武装勢力の要求が突き付けられる。
 彼らの祖国に向けられている核兵器を無力化すること、彼らの敵国に駐留する米軍を撤退させること、フォート・デトリックの生物兵器を全て譲渡すること。24時間以内に要求が受け入れられなければ、手元にある炭疽菌をホワイトハウスに拡散させること。
 唸りそうになる副大統領の手元にメモが滑り込んだ。
『デルタフォース突入許可の要請あり。正面玄関より陽動。実際突入人員2名:デルタフォース隊長、及び外部医師ドクター・キリコ』
 副大統領は武装勢力に向かって早急に検討すると告げ、連絡を切った。


 二人が逃げ込んだのは大統領執務室だった。アンディが指示したのだ。ここから核シェルターへの隠し通路がある可能性が高いという知識が理由だった。アンディは痛みを堪えながら部屋の探索を開始し、BJは不意に思い付き、大統領の重厚なデスクの引き出しを漁り始める。齧りかけのドライフルーツが出て来た時には閉口したが、ロンらしいかもしれないと思いながら次の引き出しを開けた。
 あった。必ずどこかにあると思っていた。アンディに見付けたものを示すと、特殊部隊員は親指を立てて、民間人であるはずの医者の勘を称賛した。それは無線機能を備えたインカムだった。アンディが持つ無線は核シェルターの隊長としか交信ができなかったが、これで米軍と直接連絡を取ることができる。
 アンディは身振りで、自分は通路を探す、先生が連絡を、と示す。BJは頷き、インカムを装着してシンプルな発信スイッチを入れ、先だって耳にしていたアンディの報告を真似て囁いた。
「発信。大統領執務室。インカム発見。SAS隊員一名、民間人女性一名」


 報告を受けた瞬間、グラディスが無線の音声を外部に聞こえるようにフルオープンにした。キリコにもその声が届いた。
「受信。デルタフォース隊長、グラディス」
 キリコは煙草を地面に落とし、思い切り踏み付け、無線の向こうの声を待った。
『はぁ?』
 そりゃないだろう。愛した女の間抜けた声に、キリコはたった今極限まで緊張した自分を笑ってやりたくなってしまった。


 隊長と言う名乗りに、状況を忘れて「はぁ?」と言ってしまった。自分よりも年下のあの赤毛の男が米軍特殊部隊の隊長などと、一体何の冗談なのだろうか。だが無線から聞こえた声は真剣で、疑う必要がないと告げていた。
『はぁ? じゃないよ』
「グラディス?」
『イエス。ブラック・ジャック先生?』
「イエス。大統領執務室のデスクで見付けた無線から連絡してる。SASのアンディといる。アンディは負傷してる。応急処置をした。命に別状はない」
『死なない傷なら負傷なんて言わないね。──ローズガーデンから脱出しなかった理由は?』
「邪魔が入った。パティは?」
『無事だ。ありがとう。そのクソSASにご褒美で死ねって言っておいて』
 特殊部隊同士の意地の張り合いかな、と男性同士の確執をよく目にするBJは推察した。医療現場でもよくある光景だ。男ってやつは、とおかしくなった。
「そのSAS隊員が核シェルターに行きたがってる。執務室からの抜け道はあるか?」
『ない。それより二人で安全を確保して欲しい。正面玄関からうちの隊員が陽動する。その間に動いてくれ。大統領執務室にいるんだね? そこから東に20メートル行った突き当りに大きい窓があるはずだ』
「20メートル」
『そう。10分後にそこに来てくれ。うちの隊員を二人、下に配置する。飛び降りるんだ』
「アンディを説得してくれ。患者なんだ。言うことを聞かなくて困ってる」
『代わって』
 アンディ、と小声で呼び、インカムを示した。通路を探していたアンディは渋い顔をしたが、相手が米軍だと知っていたので仕方なく従う。その前にポケットから自分の無線を引っ張り出し、核シェルターにいる隊長に「米軍と交信」と報告した。
「SAS、アンディ。軍曹。あなたは?」
『デルタフォース隊長、グラディス。陸軍少佐。貴官の尽力に感謝する。死ね』
「勘弁して下さいよ。時間がない。また武装勢力の誰かが来るかもしれない」
『何人始末した』
「4人」
『きみ一人で?』
「直接手を下したのは俺だけです」
 BJの手助けがあったからこそ、とは言わなかった。聞いているBJに余計な罪悪感を植え付けたくなかったのだ。軍人として民間人を守りたかった。
『SASにしては中々やるね。10分後に脱出してくれ』
「先生だけをお願いします。自分は自国の首相を──」
『炭疽菌がばら撒かれる可能性が高い。さっさと出ろ。きみが死ぬのは勝手だが、汚染された死体が増えると面倒なんだ』
「炭疽菌?」
 アンディの呟きに、BJは顔色を変えた。アンディはBJの変化に驚き、同時に炭疽菌の重要性、殺傷力を思い出す。BJがインカムを奪おうとしたので慌てて渡す。
「BJだ。炭疽菌だって? もうホワイトハウスに持ち込まれたってことか?」
『聡いね、その通り。ワクチンを持って、あなたの愛しの彼氏さんとフォート・デトリックから駆け付けたってわけ。ちょっとしたデートだけど嫉妬するなよ』
「嫉妬で死にそうさ。──炭疽菌がばら撒かれるのか? ホワイトハウスに?」
『核シェルター内にばら撒くこともできるんじゃないかな。もしもシェルターの中に裏切り者がいれば、内側から扉を開けることもできるかもしれないし、何なら大統領に炭疽菌をぶっかけることだって簡単だ』
 BJは溢れかけた激情を堪えるために暫し沈黙し、息を吐いた。それからようやくグラディスに言えた。
「どうしてそんなに軽く言えるんだ。どれだけ危険か分かってるのか!」
『慌てれば満足してくれる?』
「そんなこと言ってねえだろうが! 茶化すな!」
『僕は軍人だ。ドクター・キリコは炭疽菌のワクチンを持って一緒に来てくれる勇気ある英雄だ。それ以上の理由なんかないんだよ』
 何から言えばいいのか分からなかった。特殊部隊員が言いたいことは何なのか。あくまでも医者でしかいられないBJには分からない。だが女として、愛する者がいる女として、衝撃を受けた言葉がそこにあった。
「キリコが? 一緒に? ──なぜだ!?」
『炭疽菌ワクチンは知識のある医療技術者しか扱えない。炭疽菌の症状を把握している軍医が現状でワシントンにいない。ドクターは知ってるらしい。そして炭疽菌のワクチンが少ない。ばら撒かれた場合、的確に使用するためにドクターの判断が必要だ。これでいい?』
 BJは沈黙した。言っていることは分かる。それは医者として、おそらく自分も同じ立場に立てば──それでも納得したくないと叫ぶ自分がいる。どうして。やめて。そう言えない自分もいる。その時、インカムの向こうの声が変わった。
『先生』
 泣きそうになった。泣かないように努めた。あまりに嬉しくて、愛しくて、まるで愛し合うことを許されたような気になってしまう。決してそんなことはないのに。
「キリコ」
『遅くなって悪かった。夕飯は一緒に食べられるよ。食べたいものがあったら考えておいてくれ。ボンカレー以外でね』
 軍人のような声だ。嫌になった。嫌だった。こんな声は嫌いだと思った。泣きそうになった。デルタフォースの隊長と同じ声だ。どうしてそんなに軽く言えるの。そう言いたかった。だが分かった。男の声を聞いた瞬間に分かったのだ。──無事を祈って欲しい。いつもと同じ日常に帰れるように信じていて欲しい。それを口にして欲しい。お願いだから。
 お願いだから、日常に帰れるはずなんだから、って、俺に勇気を与えて欲しい。
 だからBJは言えた。泣いてはいけない。わざと軽く、そう、男たちが口にするように軽く言えた。
「早漏のくせに帰って来るのが遅ェんだよ」
『──違うって言ってんだろ、クソビッチ』
 キリコが苦笑した。それから優しい声になった。
『俺しかできないんだってさ』
 分かってくれるよね。医者なんだから。キリコの声はそう言っていた。ああ、とBJは思った。ああ、そうか。そうなんだ。──医者なんだ。軍人なんかじゃない。医者なんだ。医者だから。
 そこにある危機を知ってしまった以上、知らない振りができなかったんだね。
 でも、だからこそ。思った。決めた。愛している男に宣言した。
「私も行く」
 私は医者だから。あなたと同じように。
『──なあ、シュガー』
 愛し合わないと決めた男が、仮初の愛を囁くためにその名を呼んだ。
『愛してるよ』
 わたしも。わたしもよ、キューティ・パイ。言いながら笑った。泣いてはいけないと思った。
「愛してるわ」
 無線の向こうに、仮初と信じなくてはならない愛の言葉を投げ捨てた。


「人類滅亡直前みたいな熱い告白で盛り上がった後に悪いんだけどさ。まあ、入るだけならそこまで危険じゃないよ」
 キリコは「そこでそう茶化すか」とグラディスを殴ってやりたくなったが、これはもうこの男の性格なのだろうと諦めることにした。
「デルタの陽動で正面玄関に武装勢力を集める。僕とドクターは忍び込むわけだし、運が良ければノーエンカウントで行けるかもしれない」
「炭疽菌の方が危険だな。ばら撒かれたら俺たちも危ない。考えようによっちゃ銃より面倒だ」
「そうだね」
 何があるか分からない、女が死んでも知らないよ。デルタフォースの隊長は言った。構わないさ。キリコは答え、突入のための装備を整える青年を見る。若い。最初の顔合わせの席で、彼がデルタフォースの隊長だと名乗った時にはキリコが咄嗟に信じられなかったほどに若い。SASのアンディとさして変わらない年齢だろうに。
 だが今、理解できたような気がする。
 あれだけ重要な、大統領の生死が関わるような出来事であったはずなのに、連絡経路が極端に混乱した。早い時間から不審な飛行体があっても毅然とした決断を下せる上層部がいなかった。
 アメリカは弱くなった。あのベトナムから。
 グラディスは朝から、それ以前から、それに怒り続けていたのではないだろうか。
「グラディス」
 短機関銃の弾倉を確認している男に問う。
「望みは何だ」
 他にも訊きたいことは山ほどあった。今は時間がなかった。だが訊きたかった。急激に、この男への疑問が堰を切ったように脳裏に溢れようとしていた。
 おまえが撃ち殺した研究員のポケットに、なぜエボラ属の試験管が入っていると分かった? なぜ隊長のおまえがわざわざフォート・デトリックで、一人きりでセーフティレベル4のフロアを警備した? なぜあんなにもすぐにフォート・デトリックを閉鎖する命令を出せた?
 そうだ、まるで──
 まるで、全て計画していたかのように。
 あの研究員は本当にあの試験管を持ち出そうとしたのか。
 俺は、もしかしなくても、本当は、分かっているのかもしれない。
 あの時、あの時間、彼らが、俺が、どうしても自分以外に集中する瞬間があった。サンプルが開封されるあの瞬間、俺たちは自分のことなど何も考えていなかなった。
 その時に試験管がどうだなんて──警備の下調べのために、前もってセーフティレベル4に入れたはずの誰かが、何かを、誰かにするなんて簡単なことだ。
 わざわざ俺に言ったよな。デルタはここの備品に触れない規則だから、って。言う必要があったのか? 自分は関係ない、デルタは関係ないってことを俺に印象付けるためだったんじゃないのか? ──俺を今回のことで動かすためだったんじゃないのか?
 グラディスはゆっくりとキリコを見た。その目を見て、ああ、こいつは、とキリコは思った。こいつは──キチガイだ。
 目的を持った、気狂いだった。
「フォート・デトリックの騒ぎで充分だったのに、テロられるなんて想定外だったんだ」
 それが全ての答えだった。キリコは黙り、今は自分が話す時ではないと思った。
 この気狂いはたった今、キリコの目の前で、自分がフォート・デトリックの件の首謀者だったと言ったのだ。
「外部だけどベトナムを知ってる人にちょっと活躍してもらえれば良かったし、少しワシントンがレベル4のウィルス流出危機で騒ぎになって、大統領が綺麗に片付けてくれるだけで良かった。英国首相も付き合わざるを得なくなるだろうし、いいアクセントになるはずだった」
 そして気狂いは言った。
「強いアメリカを取り戻すんだ」
 キリコはしばらくグラディスを眺める。グラディスは尚も言った。
「ベトナムを悪夢だなんて、もう誰にも言わせない」
 グラディスから視線を逸らさない。若い男だ。若い世代だ。
「今の大統領なら、できるんだ」
 ベトナムに従軍などしていないはずの世代の男。だからこそ、あの戦争が間違いだったと教え込もうとする大人たちに抑圧された世代の彼。
 ベトナムを悪夢として生きる、それでも悪夢を間違いだったとは言い切れない隻眼の男は、その右手を差し出していた。
「──“Who Dares Wins”」
 挑む者が勝利する。
「SASの標語じゃないか、クソッタレ!」
 怒った顔を作り、差し出された手を払う振りをして、思い切り打ち合わせる音が響いた。わざとデルタフォースと対立する存在の言葉をくれてやったキリコは笑いながら「痛ェよ」と言った。
 若い世代が悪夢と言わないのなら、俺もあの日々の生命たちも、決して無意味な存在ではなかったのだと思えた。その手段が異様だとしても、異様な世界に住む自分が気にすることではないはずだった。
「グラディス」
「何」
「炭疽菌は誰が持ってる?」
 グラディスはキリコが全てを理解したと知り、薄く笑った。ああ、とキリコは満足した。ああ、──気狂いの顔だ。最高じゃないか。これから俺の、俺たちのベトナムを救う男が気狂いだなんて。これから俺の女を救う捨て駒になってくれる男が気狂いだなんて。
 こいつが死んだって、こいつの生命を俺の左目に入れてやる必要なんかないんだろう。
「それは流石に分かんないんだ、本当にイレギュラーだったからさ」
 でもどうせ殺せばいいだろ、と気狂いは笑い、そうしろよ、と死神も笑った。
 無言で、立会人もなく、何の証文も声明もない、それでも深い部分で何かを共有する盟約がそこに成立した瞬間だった。