Zombie Marine! 01



穏やかな波だ。穏やかな空だ。だがベポはとても穏やかではいられなかった。
双眼鏡を覗いて腰を抜かしたベポを、シャチとペンギンが慌てて抱え起こそうとする。しかしかなりしっかりと抜けた腰は、他人の手を借りてもびくともしなかった。
「ベポ、どうした?」
「み、見てよー!」
がたがたと震えながらベポは双眼鏡をシャチに渡す。シャチは首を傾げつつも双眼鏡を目に当て、これから接岸する港へと目をやった。
「うお」
ベポほどではないが多少の驚きの声の後、苦笑いして双眼鏡を外す。
「確かにちょっとびっくりするなあ」
「怖くないの? シャチ、ゾンビとか怖くないの!?」
予備知識もなく覗いてしまったベポは余程ショックだったのか、涙目でシャチの袖を引っ張った。シャチは肩を竦めてペンギンに双眼鏡を渡す。無論ペンギンも港を見る。先の二人の反応で大体の予想をつけていたペンギンは笑った。
「壮観だな、ゾンビに占領されてるぜ」
「えー! 大丈夫なの!? G-5大丈夫なの!?」
「いやあ、どうだろうなあ。ゾンビは厄介だし、流石の中将さんもやられちゃったかもなあ」
「ええー! あの化け物みたいに強い人がやられちゃうってー!」
褒めているのかいないのか、判別し難い嘆きを振りまくベポに船員たちは笑う。
徐々に港が近づいてくる。いつものG-5の基地がある港だ。港の警備員たちも既にハートの海賊団の来訪に気づき、普段通りの警備をするために接岸予定部に集まり始めていた。
「近づくよ、大丈夫なの!? キャプテン呼んだ方がいいんじゃないの!?」
慌てふためくベポの純真さに心を洗われそうになりながらも、シャチとペンギンは顔を見合わせる。
「いや、ベポ、とりあえず係留準備しといて」
「大丈夫なの!?」
「俺らが何とかするから。何かあったら呼ぶから」
二人に促されたベポは怯えた様子を隠しきることができず、震えながら係留準備をしに行く。可愛いねえ、可愛いよねえ、と二人はしみじみと頷いた。
「ところでシャチ」
「おう」
「あのイカしたゾンビたちのこと、キャプテンに教えてあげとく?」
「キャプテン、まだ寝てんだろ?」
「接岸まで起こすなって言われたな、そう言えば」
「じゃ、接岸手続きと物資補給手続きでキャプテンのサインしろって言われるまではいいんじゃね?」
「だよな」
「それにしてもG-5って結構――ヨーソロー!」
「ヨーソロー! ――G-5ってこういう作業、他の係留地より早いよな」
G-5から手旗信号で送られた接岸許可の合図に了解の返事を叫んでから、二人は再び顔を見合わせる。
「ところでペンギン」
「おう」
「キャプテンってゾンビ平気だっけ」
「さあ、そもそもゾンビに出会った時のキャプテンを見た覚えがなくて」」
「そりゃ俺もだけどさ」
「寝起きで予備知識なしでゾンビ」
二人はみたび顔を見合わせる。
そして今度は同時に肩を竦めた。
そんな寝起きじゃ本当に最悪だろうね、と。
接岸場が近づいて来る。ハートの海賊団の船を無事に停泊させるため、何十人もの男たちが待ち構えていた。
正確には、何十人ものゾンビたちが。




「で、物資補給のために寄港しておきながら」
珍しく港の入港管理局までやって来た――早い話が駆けつけた――スモーカーが、流石にばつの悪い顔をして椅子に座っているローを見下ろす。たまには素直な顔をするもんだ、と思い、有害極まりない煙を吹きかけることは勘弁してやった。
「警備連中のゾンビの仮装にびびったお前が」
「びびってねえ、驚いたんだ。まだちょっと眠かったし」
「ほう、そうかい」
同じようなもんだろう、とは言わず、ここはローの子供じみたプライドを尊重しておく。下手につつくと臍を曲げて更に面倒なことになりかねない。今でさえ面倒なのにこれ以上の状況悪化は御免被りたかった。
「で、寝ぼけてる上に驚いたお前が、条件反射でROOMと切断を発動した――って認識でいいな?」
今日はハロウィンだ。誰もが浮かれた気分になっていた。昔からの慣習で、この日だけはG-5もいつも以上に一日を楽しんでも良いことになっている。夜のパーティが待ちきれず、朝から仮装をする者も多かった。
寝起きのローは港の警備担当者たちが揃ってゾンビのメイクをしている現実に驚き、本人からすれば部下を守る防衛のため、他人から見ればいわゆる狼藉を働いたのだった。シャチとペンギンが蒼白になって止めなければ港は崩壊していたかもしれない。
結果的には大きな怪我をした者もなく、むしろ切断されたほぼ全員が「ハッピーハロウィン!」と笑っていたのはG-5の剛胆さならではだろう。
「さあな、そう思いたきゃ思えばいいんじゃねえの」
「イエスかノーで答えろ、記録にしなきゃいけねえんだ」
手に持った書類をローの眼前に突きつける。要は調書だ。先にたしぎが体裁を整えてくれていた。後は内容に間違いがないかどうかをローに確認させ、双方でサインをしなければならない。
「もう一回確認するぞ。寝ぼけた上に驚いたお前が条件反射でROOMと切断を発動した。イエスかノーで答えろ」
「どっちがいい?」
「俺を怒らせたければイエスと言え。褒めてほしけりゃノーだ」
「そこまで天邪鬼になるほど俺を用心する理由ってのは何なんだ」
「日頃の行いを省みればすぐ分かるはずだが。――三回目だ、いいな? Yes or No?」
スモーカーは思い切り腰をかがめ、ローに葉巻で火傷をさせないことが不思議なほどに顔を近づけて返答を迫る。ローは眉をひそめ、今回は譲歩することにした。
「Yes」
「良い子だ」
よく回る口に何かを言い返される前に素早く葉巻を手に移し、唇を掠め取ってから、スモーカーは書類をローの顔にべしりと押し当てた。
「さあパンプキン、俺の気分が良いうちにサインしろ。そうすりゃ楽しいパーティに交ぜてやる」
「さっさとくたばれ、クソッタレ中将」
毒づく声がくぐもったのは、顔を書類で覆われていたからだ。耳が熱いのは気のせいだ。きっと気のせいだ。ローはそう結論づけ、おとなしくサインすることにした。
唐突にパンプキン――恋人や愛しい相手への愛称を呼ぶのは本当に卑怯だ、と思いながら。
「パーティなんてやるのか」
「夜にな。お前も仮装するなら市街で衣装を探して来い。それとも船にあるのか」
「しねえよ、馬鹿か。パーティなんてもんも出ねえ。お前が仮装するなら笑ってやるけどな」
「毎年やってる」
「マジかよ」
自分で言っておきながら、予想だにしなかった答えにローは思わず声を上ずらせた。見た目から想像するよりもずっと堅物の男が仮装をするなど考えられない。スモーカーは少々決まり悪そうに肩を竦めた。
「毎年たしぎが勝手に用意するんだよ。――俺はまだ仕事がある、お前は勝手に用事を済ませて良い子にしてろ」
「用事」
「ねえなら帰れ」
「用事――」
そんなものはない。いや、あるにはある。だがそれを口にするのは悔しい。分かっているくせに、とローは思う。スモーカーはなぜここにハートの海賊団の首領が現れるのかをよく分かっている。だがいつも知らない顔をする。それがローには酷く悔しかった。
悔しくても認めるしかない。スモーカーはローをいつでも受け入れるように見えて、その実、ローがはっきりと口にしなければいつまでも正面から相手をしようとしない。
言わなければそのままだ。それが酷く悔しいし、もしもそのまま今回の停泊の時間が終わってしまったら――きっと酷く寂しいだろう。ローは分かっていた。
「用事は」
「ああ」
「いや、ハロウィンとかはどうでもよくて」
「ああ」
「だから」
過去に一度、意地を張ったわけではなかったが、何となくどうしても伝えることができなかった。その時は本当にスモーカーは一切ローの存在を無視し、物資補給と船員のリフレッシュを終えたローはそのまま再び海に出なければならなくなった。自分でも驚くほどに酷く寂しいと思い、酷く後悔した。
「だから」
「ああ」
「――お前とセックスしに来た」
用事と言うより欲求だ、と言ってから思った。だがその言葉しか今は言えなかった。毎回こんなことを言っているような気がする。だが嘘でもなければ見栄でもない。海の上でもどこでも、スモーカーを思い出すと、ただ彼と肌を合わせたいという欲求が燻るのだ。
「ったく」
僅かな間の後、スモーカーが苦笑する。
「このクソガキは本当にどうしようもねえな」
その笑い方をどう表現すればいいのか、ローには分からなかった。ただ、受け入れられたことだけは教えてくれる笑い方だった。
だからローは安心した。安心して、誰がクソガキだ、と言い返すことができた。お前以外の誰がいる、とスモーカーがいつもの調子で言い返した。
「と言っても俺は仕事でここは入港管理局だ。流石に今すぐってのは御免だな」
「何とかしろよ。中将ってくらいならそれなりに偉いんだろう」
「何とかしたくても」
スモーカーの姿が煙に変化する。ローが何だと思う間もなく、瞬く間にドアに忍び寄った煙がまず腕の形だけを見せ、ぐいとドアノブを引く。
「これじゃやる気にならねえ」
フルオープンになったドアの向こうから、何人ものゾンビがどさどさと音を立てて転がり込んで来た。ローは唖然とし、呆れたスモーカーは腕以外も実体に戻しながら倒れた一体のゾンビを軽く蹴る。
「お前ら、下世話が過ぎるんじゃねえのか」
「いや、気になってさあ?」
倒れ込んだゾンビメイクのG-5たちは、スモーカーの剣呑な視線を受けつつも決まり悪そうに笑いながら起き上がる。
「……死んだ方がましだ」
恥ずかしさが極限に達して思わず呻いたローが耳まで赤かったことに、誰もが気付かない振りをしなければならなかった。男の情けというものだ。
とりあえず俺の執務室へ連れて行こう――スモーカーはそう決めた。まさかローがここまで赤くなるとは思わなかった、とやや驚きながら。







「トリート・オア・トリート?」
眼鏡をくいっと上げながら、冷たい眼差しでたしぎが問いかけの振りをした。明らかにおかしい内容にローはげんなりし、スモーカーは毎度のことながら苦笑いをしてしまう。たしぎのローへの態度は終始一貫していて、見ている方はいっそ気持ちが良いほどだった。
「菓子しか選択肢がねえじゃねえか。馬鹿か、お前」
「とんでもない。あなたに悪戯なんてしたくありませんし、されたくもありません」
「俺だって御免だ。気色の悪ィ」
「既に随分なおいたをしてスモーカーさんの邪魔をしてくれたわけですけど」
「……流石に言い訳しねえよ」
顔を顰めながらも素直なローの言い分に、たしぎはつい警戒する。たしぎの中では素直なローなど、明日から正義を捨てるぞと宣言するスモーカーと同じくらいに有り得ないのだ。
「何を企んでるんですか」
「ああ?」
「トラファルガーがそんなに素直なんて、おかしいです! 絶対何か企んでます! スモーカーさん、尋問の許可を――」
「おい白猟屋、毎度毎度この女海兵は何なんだ! 俺を何だと思ってるんだ!」
エキサイトしながら二人はデスクのスモーカーを振り返るが、肝心の男はいつの間にか書類を手にしていた。二人の訴えに顔を上げ「ああ」といかにも今気付いたかのように返事をする。むしろ本当に今気付いたのだった。この二人の言い争いは既にスモーカーにとって風物詩、むしろ背景のような気すらしている。
「茶でも出してやれ」
「ああ、そうでした」
たしぎがぽんと手を叩く。
「えっと、入港管理局に行かれる前の、『今日は夜のパーティの支度もあって時間が押してるから、俺の邪魔をしねえようにいつもより多めに菓子でも食わせておけ』って指令を忘れてました!」
「……ああ、うん、頼む」
「イエス、サー!」
絶対にわざとだ、とスモーカーは断定し、ローはあまりの「指令」に口をぱくぱくとさせるものの、声すら出ないという状況に陥る。そんな二人の胸中を知ってか知らずか、たしぎは足取りも軽やかに執務室を出て行った。
「白猟屋」
「……ああ、何だったかな、今日のパーティの前に――」
「話を逸らせようなんざお前らしくねえな」
「いや、言おうと思ってたんだ。パーティの前にな」
「出ねえよ、関係ねえ」
「そうか。……いや、まあ、ここの菓子が美味いってのは分かってるだろう」
「そうだったけな」
確かにここに来るたびに出される茶菓子はどれも美味かった。甘いものが大好きというわけではないが、嫌いでもないローとしては、普段の生活では滅多にない洒落た菓子が無意識の楽しみだった。
だが今日は別だ。丸っきり子供扱いをされていたと知ったとあっては穏やかではいられない。男として納得できないし、スモーカーに怒りさえ感じた。
「船の補給が終わったら帰る」
「おい」
「元々その予定だったんだ」
「悪かった、機嫌を直せ」
「別に不機嫌にもなってねえ」
「全身で不機嫌ですって言ってるじゃねえか」
犬であれば究極まで低いうなり声を出していてもおかしくないほど、ローは全身から不機嫌なオーラを発していた。覇気として使ったらどんな奴でも逃げるだろうな、とスモーカーは思う。
とはいえ、ここまで不機嫌なローは珍しい。不機嫌になる理由も当然分かるし、ローとしては陰口を言われていたような気分にもなっているだろう。七武海とはいえこういう部分は年相応、否、少し年齢より幼いのではないかと思わせる一面を持つ男であることをスモーカーはよく知っている。非を認めてさっさと謝ってしまうことにした。
「謝る。俺が悪かった」
ローは答えず、応接用のソファからクッションを引きずり下ろし、窓際のいつもの指定席の床に座り込む。まだ望みはあるな、とスモーカーは知った。手の付けようがないほど不機嫌であれば執務室を出ているか、スモーカーの心臓を引っ張り出しているはずだ。
「悪かった。いつもより時間が押しそうだから、退屈させるのも悪いと思ったんだ。腹をすかせるのも可哀想だし」
「それで謝ってると思ってんのか、クソッタレの煙野郎」
言葉がどんなに汚い罵りであっても、指定席にいる以上は説得力がない。スモーカーは笑わないように気をつけ、いかめしい顔を作ったまま、指先でコンとデスクを叩いた。
「俺に子供をいじめたような罪悪感を持たせるのは勘弁してくれ」
「誰が子供だって? 大体、前からお前のそういう――」
「いいから。――こっちに来い、キスさせろ」
これで話は終わりだ。ローは派手に眉を跳ね上げたが、不意に空気が――スモーカーの能力者ならではの感覚ではあったが――動く。何だと思う間もなく、デスクの上にどかりと座ったローがスモーカーの目の前に現れた。
「便利な能力だな」
「キスさせてやるよ」
「そいつは光栄だが、お前が降りて屈まねえと顔が届かねえ」
「こっちに来いだの降りろだの、たかがキスひとつに注文が多いんだよ」
言うなりローは乱暴な仕草で葉巻を奪い取ってデスクから飛び降り、着地の足音が響く前にスモーカーの唇を奪った。ローのコートに引きずられた書類がまき散らされる。噛み付くようなキスは短い間だったが、ローの様々な感情を慰撫するには充分な効力があった。
「拾え、馬鹿。基地の物資関連の申請書なんだ」
ローの唇を親指で拭ってやりながらも、スモーカーは軽くたしなめる。葉巻を持ち主の唇に押し込み、ローはふんと鼻で笑った。
「女海兵が拾うだろ」
「女にそういうことをさせるとフェミ団体がうるせえんだよ」
「茶の用意なんかさせてるくせに?」
「あれはあいつが好きでやってるからだ」
「軍ってのも面倒なもんだな」
ローの姿が瞬時消え、窓際の指定席のクッションにどかりと現れるのと、たしぎのノックは同時だった。どうぞと答えながらスモーカーは溜息混じりに書類を拾い集める。
「いつもより多めで、しかも美味しいお菓子ですよ。これならスモーカーさんの指令もしっかり守れそうです」
今日は特別な菓子を作ったのか、たしぎが持つトレイの上にあるのはいつものケーキ皿とは違う、微かに湯気の立つココットだった。
「お前が任務遂行できるように食ってやるよ。不味かったら捨ててやるけどな」
「先にお代わりのリクエストの仕方を教えておきましょうか?」
二人の減らず口の応酬の隙にスモーカーは書類に超人的な速さで目を通す。時間が押していることは事実だった。ローの相手をしながら通常業務をすることそのものには慣れているのだが、今日は夜にパーティが入っている。残業はできない。駐留軍代表として、地元の有力者との交流が予定されていた。ヴェルゴがいなくなってから不便を感じることだった。彼がいた時は全て押しつけていたものだ。
「たしぎ、これなんだが」
「あ、はい」
「過去のデータに――」
「ああ、あるはずです。用意しますね」
仕事のことで二言三言交わすと、たしぎは上官と侵入者(彼女からすれば侵入者にすぎなかった)に紅茶を入れてから執務室を出る。
この案件はどうするか、こっちは――何かと頭の痛い物資申請書と格闘しながら、ふと横目でローを見る。普段は何だかんだ文句を言っても出されたものは全て食べる男だが、今日は食が進んでいないようだった。まだ拗ねているのかとも思ったが、そういう態度でもない。一応つついては口に運び、次に紅茶を飲むと言った風情だ。
「どうした」
「ん?」
「美味くねえのか」
「腹減ってねえんだよ」
スモーカーの言わんとするところを理解し、ローは素っ気なく答え、勝手に執務室の本棚を漁り出した。これなら当分静かになるな、とスモーカーは思い、さっさと仕事を進める。とにかく時間がなかった。パーティの前にも行きたい場所があったのだ。
ローは本を読みながら時たま思い出したようにココット皿をつつく。湯気を立てていたはずのそれはやがて冷め、明らかに風味は落ちてしまったであろうことを見た目で教える。スモーカーに言われたデータを用意して再び現れたたしぎがちらりと見、がっかりした顔を隠そうとして失敗した。
「トラファルガー」
「ああ」
「口に合いませんでした?」
「お前の料理が口に合ったことなんか一度もねえ」
「……それはちょっと苦しい言い草じゃないですか?」
「たしぎ、資料」
「あ、はい」
スモーカーが仕事の話をしたので、たしぎはそれ以上ココットの中身が減っていない原因を追及することができなかった。味見をした時は美味しかったんだけどな、と心の中で呟く。何だかんだでいつもは全て平らげる男が残していることに、自分でも予想以上のショックを受けていることに驚いた。
スモーカーは溜息を押し殺す。たしぎが戻って来る前に自分が食べておくべきだったか。手の掛かるガキどもだ、と思った。
「こっちを本部に送付しておいてくれ」
「はい」
「送付したら今日の業務は上がっていい。準備があるだろう」
ハロウィンの仮装の用意だ。本来なら子供がするものだが、スモーカーの赴任前からG-5では駐留軍の兵士たちも仮装することが恒例になっていた。赴任した時にはスモーカーはひどく面食らったものだ。何しろあのヴェルゴまでもが仮装していたのだから。