もう二週間ほど陸に上がっていない。新兵だった頃には当たり前のことだったし、長ければ半年も艦に乗っていたものだが、出世と共に陸にいることが多くなるのも確かだ。ローグタウンにいた頃には艦に乗る方が珍しかったな、と何となくしみじみしてしまう。
「思えば遠くへ来たもんだ」
我ながら年寄りめいた言葉を口にし、スモーカーは甲板に出る。それぞれの仕事をこなしていたG-5の面々が一瞬振り返ったものの、すぐにまた前方へ視線を向け、忙しく、そして緊張した面持ちで仕事を続行した。──目の前に今にも大砲を打ちこんで来そうな海賊がいれば当然だ。
ここ最近、界隈を賑わせている海賊の所業が海軍の許容範囲を超え、公にスモーカーが討伐に向かうことになった。最初はたしぎを行かせようかとも思ったのだが、海賊たちの縄張りは、まだ彼女を最高責任者として送り出すには日程がかかりすぎる距離があった。その日程の間、彼女がG-5を完全に統制できるかどうかを考え、やはりまだ自分が行くべきだろうとスモーカーは結論付けた。たしぎを過小評価するつもりは毛頭ないが、過大評価することもできなかった。
とはいえ、とりあえず艦内での基本的な指揮を任せることにしていたが、いざ海賊を発見し、睨み合いとなって数日、何ら進展がない。ここまでだと判断し、スモーカー自身が指揮を執ることにした。
「たしぎ」
「スモーカーさん」
「詳細」
「……すみません」
甲板にスモーカーが現れたことに気付いたたしぎは、分かってはいたものの、かなり自分に絶望した顔をした。それに気づかない振りをし、スモーカーはたしぎの報告を待つ。
「相手の船はおそらく──」
大砲の予測数や人数、数日の交渉の結果を報告する。スモーカーはその内容を分析しつつ、たしぎがそれなりに結果を出していることを認めざるを得なかった。
「よくやった」
「え」
「大砲の数が分かれば対策が立てやすい。人数が分かれば大砲に回す人員と白兵戦に移るまでのタイムラグを予想しやすい」
「……はい」
たしぎは明らかにほっとし、そしてどこか嬉しそうに笑った。こりゃまだまだだ、とスモーカーは思う。褒められて露骨に喜ぶ姿など、指揮を執るべき階級の人間は見せてはならないものだった。
「でも、能力者がいるかどうかは確認できていません」
それは重要な確認事項だ。能力者の人数、種類、それを把握できているかどうかで戦況は大きく変わる。
「もし白兵戦になったら──」
「俺が出る」
「でも」
私に任せてくれていたのに──口には出さないものの、たしぎは声に悔しさを滲ませる。
「お前もいる」
だからスモーカーは事実を告げた。
「怖いものなんざねえよ」
いつだったろう。自分もこんなことを言われたことがある。あの氷の男に言われたのだ。初めて言われた時の誇らしさ、嬉しさを今でも覚えている。彼に比べれば自分はまったく良い上司などではないし、これからもそうなれる気はしない。
それでも、途端に嬉しそうな、誇らしそうな顔をした部下を見て、どうかもうしばらく騙されていてくれよ、と思った。
「交渉する。繋ぎをつけろ」
「はい」
たしぎがG-5に指示を出し、相手との交渉の席が整うまで、スモーカーは目の前の海賊船を甲板から観察する。そこまでの大型ではない。人数もこの規模なら平均的で、G-5が多少上回るだろう。問題は能力者だが、強力な能力者がいるという情報は入っていない。
適当に白兵戦に持ち込むか、俺一人でボスを捻り上げて終わりにするか──そう決めた時、ポケットの中の電伝虫が喚き出す。こんな時に鬱陶しいと思いながら引っ張り出すと、同期の女の顔をして喚いていたものだから、溜息をついて応答することになる。
「ハロー」
『ハロー、ご機嫌いかが?』
「良くも悪くもねえな。仕事中だ」
『あら、小物の討伐かしら。どこの連中? 座標は?』
「北緯──」
機密事項だが、ヒナが相手なら世間話のようなものだ。誰かに咎められれば改めようといつも思っているし、そしていまだ誰にも咎められたことがなかった。
『ふうん、分かったわ。G-5から離れてるじゃない。それじゃ基地に戻るまでだいぶ時間がかかるわ。ヒナ不満』
「二週間程度だ。大した距離じゃねえし、お前に不満を持たれるいわれもねえぞ」
『大切なことを忘れてるんじゃなくて?』
「何だよ?」
『お誕生日おめでとう』
「そういやそうだった。ありがとう」
本気で忘れていた男は、目の前の海賊船を眺めながら思い出した。
「ヒナ」
『なあに』
「どうして俺は誕生日にまで仕事をしてるんだ?」
海賊たちは静かなものだ。それほど頭が悪い海賊たちではないのかもしれない。程度の低い海賊であれば、数日も海軍と睨み合いをすることはないはずだ。無駄に大声を張り上げ、威嚇し、勝手にエキサイトして既に大砲のひとつも撃っているだろう。そういった相手の方が殲滅には楽なのだが、今回は少し手こずるかもしれない。
電伝虫の向こうでヒナが溜息をついた。
『そこに海賊がいるからでしょう』
「なるほど。でもな」
『ええ』
「急に腹が立った」
『あら、珍しい。仕事の鬼がどうしたの。ヒナ意外』
「約束を忘れていたんだ」
『ふうん?』
「お前のおかげで思い出した」
『あら、まあ、そう?』
うふふ、といやに楽しそうな──スモーカー以外の男が聞けばとても妖艶な──笑い声が聞こえる。思えば遠くへ──スモーカーはまた思った。昔はこんな笑い方をする女ではなかった。時間と経験が自分たちを変えて行ったのだろう。
「手早く済ませる。投げ出すわけにもいかねえからな」
そして時間と経験の中、新しく得たものもあった。感傷に浸る時ではないが、つい思い出したのも確かだった。
『近ければ代わってあげられるんだけど。その座標じゃ今すぐ出ても二週間はかかっちゃうわ』
「──お前、どこにいる?」
『分かったのに質問するなんて、スモーカーくんらしくないわ。オーバー』
「おい──Fugly(どブス)!」
一方的な通話の終了を告げられて電伝虫を切られ、スモーカーはつい、滅多に口にしない罵り言葉を吐いてしまった。報告に戻って来ていたたしぎがそれを背後で聞いてしまい、固まっていたことに気付いたのはほんの数秒後で、ああいや、その、今のは俺の口が悪かった、と呟くはめになり、それはもう上司として気まずい思いをしたのだった。
交渉は電伝虫で行われた。スモーカーは甲板に立ち、海賊船を見ながら話すことになる。海賊たちは甲板に並んでいるものの、電伝虫で話している男──ボスであろう男は見えない。おそらく船室にいるのだろう。
ボスは無駄な恫喝をしてくるわけでもなく、それであればスモーカーも言葉を選んで平坦な声で話すことになる。狂犬だの野犬だのと言われ放題の経歴だが、必要な交渉術もそれなりに身に付けていた。力だけで向かってくる相手には力で返し、交渉を行おうとする相手には交渉で返すだけの話だ。
海賊の要求はこの上なくシンプル、かつ図々しいものだった。この海域での海賊行為をやめさせたければ1000万ベリー、海域から出て行かせたければ5000万ベリーを海軍から支払うようにというものだ。スモーカーとしては、頭湧いてんじゃねえのか、と相手に聞こえなければ言いたいところだった。
普段のスモーカーであれば、たとえ受け入れるつもりがないとしても、検討すると言って一度通話を打ち切るところだ。だが今日はどうしてもそんな気にはなれなかった。何しろ腹が立っている。
「そうか」
『良い結果になるといいな。俺たちも面倒は避けたい』
「俺としては5000万ベリー分の結果を出したいと思ってるよ」
電伝虫の向こうにそう答えると、会話相手の海賊は笑った。その笑い方がいかにも悪役のもので、スモーカーの耳に酷く障る。人生で何度も聞いている類の声だが、腹が立っている時にはとにかく神経を逆撫でされるものなのだ。
『野犬って噂のスモーカー中将にしちゃ、穏やかな選択じゃないか』
「そう思うか」
『思うさ。時間を置こうか? これだけの大金、あんたの決断だけじゃ動かせないだろう。海軍本部に連絡する必要があるんじゃないか?』
「親切な海賊だな。お気遣いに感謝する」
話しながらスモーカーは右手を肩の高さに直角に上げる。甲板から見ていた海賊たちが身を乗り出し、海軍中将が何をするのかと注視した。スモーカーの背後で──G-5が明らかに武器を構え、たしぎを中心に戦闘態勢を整えれば当然のことだ。
「5000万ベリー分の結果、ってのはな」
低く呟く。それは宣言だった。
海軍中将としての、海賊への最終宣告だった。
「一銭もくれてやらずに、同じ結果を出すってことだ」
スモーカーの右手が降り降ろされれば全てが始まり、全てが終わることになる。海賊たちは息を呑み、海兵たちは気炎を上げ、そしてスモーカーの右手は──振り降ろされることはなかった。
『何だ、てめ──ハートの──ぎゃっ!』
電伝虫の向こうの絶叫を聞きながら、間抜けだ、とスモーカーは思った。今の俺はひどく間抜けな顔をしているだろう、と思った。
耳元から遠い悲鳴が聞こえる。激痛を訴える声に重なるように、ムカつくんだよ、と呟く声と、うふふと笑う女の声が耳に届いた。誰の声かなどと分からないはずがなかった。
「……どブスって言ったのは撤回する」
「え?」
「何でもねえ。──たしぎ、済まねえ」
「ええ?」
「後は頼む」
空間が歪む気配を感じた。能力者にしか分からないであろうその感覚の後、スモーカーはもう慣れた、ある意味では愛しいとも思える空気の層の動きの発動を待つ。やがて幾重にも重なったカーテンをめくるように、空気の層の中からその存在は現れた。
見た瞬間にお手上げだった。電伝虫の通話を切り、たしぎに投げる。たしぎは受け取りながらも唖然とし、何で、と呟いた。背後のG-5の面々に至っては、半分以上が口を開けている状態だ。そりゃそうだろうな、と背後の様子を的確に予想したスモーカーは思う。
そりゃそうだろう。そう思うしかないだろう。
最悪の世代にして王下七武海、死の外科医トラファルガー・ローが──これ以上ないほどに仏頂面でありながら、黒檻のヒナを横抱きに抱いて姿を現せば、他にどんな反応をすれば良いのかなどと分かるはずがないのだ。
抱かれたヒナがにこりと笑い、そのままの姿勢で簡単な敬礼する。
「ご機嫌よう、スモーカー中将」
敬礼する美しい指先に、無粋な海賊の心臓がある。
「ご機嫌よう、ヒナ中将」
スモーカーは溜息を押し殺し、答礼した。同時にローがヒナを普段の仕草よりも僅かに丁寧に下ろす。ヒナさんには優しいのかしら、とたしぎは何となく不思議に、そして自分でも分からない程度に僅かに不満を感じた。
「いいもん持ってるな、どうしたんだ?」
「頂いたの。私にくれるんですって」
手にした心臓を弄び、ヒナは上機嫌だ。G-5の男たちは美しい女中将の猟奇的な姿に見惚れ、スモーカーは彼らの様子に溜息を禁じ得ない。
「たしぎ」
仏頂面で自分を見ようとしないローを見ながら、スモーカーは背後のたしぎを呼ぶ。
「あ、はい!」
「あとはヒナ中将に全権移譲する。よく従え」
たしぎは咄嗟に理解できず、え、え、と慌てふためきながら上司の背中と美しい女中将を見比べる。無粋な心臓を指先で弄ぶヒナはたしぎの様子に気付き、にこりと微笑んでみせた。だからたしぎは返事をするしかなかった。
「い、イエス、サー──仰る通りに!」
次の瞬間、ローの唇と指が動いた。
シャンブルズ。
「さあ、あなたたち」
ヒナが言った。
「下っ端海兵が考えることなんて、なぁんにもないわ。私の言うことをお聞きなさい」
今しがた、海軍中将と七武海の海賊が消えた辺りを見ながらヒナは宣言する。
「聞きたくなければ出世なさい。できないと思うなら海軍なんてさっさと辞めて故郷にお戻りなさい」
誰も返事をしない。突然替わった指揮官の言葉は海風の中によく響き、彼らの中に驚くほど自然に沁み込んで行った。
「戦闘準備、ただしボスは生け捕りよ。よくって?」
「──イエス、サー!」
真っ先に絶叫のごとき返事をしたのはたしぎで、一瞬遅れて男たちが同様に絶叫する。
ヒナは恐ろしいまでに美しく微笑み、ローから受け取った海賊の心臓を高く掲げ、そして振り下ろした。──行け。
「……どういう流れなんだ?」
G-5の基地、そして自分の仮眠室のベットの上。一瞬で移動していた。ローに連れられてシャンブルズで移動することは初めてではないが、これだけの長い距離の移動は経験がなかった。少しばかり目眩がするのは三半規管が揺れたからだろうか。遥か昔に船酔いを克服した時に、三半規管の不調も同時に克服したかと思っていたが、どうやら完全ではなかったらしい。
「流れって?」
スモーカーの上にどかりと乗り上げ、見降ろしながら、明らかに不機嫌な顔でローが問い返す。質問に質問で返すなよとスモーカーは言いたかったが、ローが本当に不機嫌であることが分かり、喧嘩になりそうな言動は控えることにした。
「何であの場所に、お前とヒナが一緒に現れたんだ」
「……予想してんじゃねえのかよ」
「いや、まあ、一応はな」
「だったらそれで正解だ」
そう答えるローの口調は不機嫌極まりなく、だがそれは一種の悔しさを隠すものだとスモーカーは分かっている。なるほど、と思う。スモーカーの予想が正しいのであれば、ローはきっと悔しいだろう。
「お前が執務室に来たら」
「……ああ」
「ヒナがいたんだろう」
「……何か、お前が誕生日だから来たとか言って……」
「ああ、そうか」
毎年のことではないが、お互いに時間があれば誕生日を祝う程度の関係性はある。今年はたまたまヒナが地上にいる期間で、そしてちょうど激務ではなかっただけだ。視察だの何だのと理由をつけて公費で来たのだろう。そこでローと鉢合わせをしたわけだ。
「毎年かよ?」
「偶然だ」
乗り上げているローの腰をぽんと叩く。明らかに嫉妬している声だったからだ。心配することじゃねえよ、と教えておかなければいけなかった。
「約束してたから、驚いた」
「そうか」
「黒檻屋がいるなんて予想外だ」
「悪かった。俺だって知らなかった」
それ以前に約束そのものを忘れていた、などとは絶対に言えない。不機嫌になるどころの話ではなく、どん底まで傷ついた顔をするに決まっているからだ。恋人とは(スモーカーなりに)誠実に付き合うことをモットーとしているが、何もかもをべらべらと話すことが誠実だとは思わない。
珍しく恋人と約束をした。それが何よりも大切な真実であればいい。
自分から何一つ甘いことを言えないローが、恐らく決死に近い気持ちだったろう、電伝虫で連絡を寄越したのは海に出る数日前だった。
3月の14日は誕生日だろう。会いに行ってやってもいい。
お前次第だよ、好きにしろよ、とは言えなかった。普通の恋人同士なら、当たり前のように交わされる会話でも、ローにとってはとても勇気のいることだと知っていたからだ。勇気を出してくれたことが嬉しかった。だから素直に言った。お前が誕生日に来てくれるなら、とても嬉しい。
「でも」
「何だよ」
「驚いた」
「何がだよ」
「お前がヒナを姫抱きでシャンブルズして船に来た時」
「あれは──いや、一応……女だし……」
真っ赤になり、そして焦ったように口ごもる年下の恋人を下から見上げ、これはもう何という可愛い生き物なのだろうかとスモーカーは楽しくてならなかった。ローはスモーカーが怒っている、あるいはそこまでではなくとも心に引っかかったと勘違いして焦っている。スモーカーとしては全くもってそんなつもりはなかった。ローやヒナに色めいた関係があるはずがないと分かっていた。
「だからヒナが座標を聞いたのか。おかしいと思ったんだ」
「……俺は聞かなくていいって言ったんだ」
「ふうん」
お前のそれは聞いてくれってことなのさ、とスモーカーは心の中で呟く。
「悪かったよ」
「何がだよ」
「仕事とはいえ、連絡しなかった」
「仕方ねえ」
「そうか?」
「……仕事だろ」
「それでいいなら、いいんだがな」
下から手を伸ばし、見降ろすローの頬を撫でる。その途端、うう、とローは呻いた。数度同じように呻いてから、突然がばりとスモーカーの上に覆い被さる。
「……嘘だ」
「そうか」
「連絡くらいしろ」
「悪かったよ」
「会いに来てやったのに、黒檻屋が偉そうにお前のデスクに座ってて」
「あいつらしい」
その光景も容易に想像がつく。あのデスクで煙草を片手にして、あら豆大福ちゃん、とこれ以上ないほどに、年下のオトコノコを可愛がる声で挨拶をしたのだろう。
「でも」
覆い被さる恋人の背に腕を回す。見た目の細さよりもしっかりとした筋肉を持つ身体はあたたかく、そして少し鼓動が速かった。
「会いに来てくれた」
「まあな」
「ありがとう」
「……何だよ」
回した腕に力を入れる。充足の息が漏れることを抑えられなかった。
「ありがとう」
返事はなかった。代わりと言わんばかりに、がう、と声が聞こえそうな勢いで首筋に噛み付かれる。スモーカーは笑い、痛ェよ、と言った。返事の代わりに何度も噛み付かれ、そのたびに痛ェと笑いながら言う。やがてローも笑い出し、二人でベッドの上で転がりながら笑ってしまった。笑う理由など分からなかった。恋人が照れ隠しに噛み付いて、それがいつしか楽しくなっただけだ。だから笑った。理由はいらないのだと、いらないことが楽しいのだと思う。
幸せなのだと思う。
「ロー」
「うん?」
スモーカーを脱がせにかかっていたローが顔を上げ、首を傾げる。その顔があまりにも可愛くて、ああ、キスしたいな、とスモーカーは思った。
「嬉しいよ」
ローはしばらくじっとスモーカーを見ていたが、やがて耳まで赤くなり、両手で顔を覆ってああもう、ううん、と呻き始める。スモーカーはその姿が可愛くてたまらない。
「……あのさ」
「うん」
ローが呻き声の延長のような声で、顔を──赤いままだったが──見せ、小さく言った。
「言ってなかった」
「うん」
「あのさ」
誕生日おめでとう。
ありがとう、とスモーカーが言う前に、それはもう噛み付くがごとく乱暴な、それでもこれ以上に愛情を(ローとしては)示す手段を知らないというような甘いキスに襲われた。笑いながらキスを受け、抱き締められて抱き締める。
嬉しいよ。キスの合間にそう言った。ローは嬉しそうに笑って、俺も嬉しい、と言った。二人で笑い、またキスを繰り返して、どこかの海域での海賊の悲鳴など聞こえないまま、朝までベッドから出るものかと決めたのだった。