再録

書きかけとか

「黒男が先生♀のおっぱいを揉む」というよく分からない話です。pixivに上げてたんですが、「黒男が攻になるのは先生♀相手でも嫌だ」というご意見を頂いたので、サイト移動時になかったことにしました。内容も酷いし。とりあえずここで供養でも。まだキャラが固まってなかった頃なので怖くて流し読みしかしていません。まじこわい。

【俺くんと私さん】

「おお、すげえ! 人間!」
「失礼なのよさ! ピノコは最初っから人間なのよさ!」
「あ、そうか、ごめん。でもすげえ!」
「んもー、レレイに気安く触なないのよさー! おれくん、ほんろにちぇんちぇい!?」
 ピノコを見て感激、かつ医学的興味から興奮する黒男青年に、BJは得意げに鼻を鳴らす。
「あと何年かすれば俺くんがこんなに可愛い子を産むってこった」
「私さんは女性だから産むって表現も分からなくないけど、俺が産むって……でもそういうことだよなー、俺やっぱり天才なんだな」
BJの後ろに逃げ込み、ピノコは黒男を睨み付ける。黒男はその視線に感情がこもっていることにすら感動し、すげえ、すげえと何度も繰り返し、BJは更に得意げだ。
「これどうなってんの、俺氏」
「知りたいか、俺」
「……あれ、メタってやつ?」
「メタってやつだ」
 軍医は溜息をつき、左目を失っている未来の自分を眺める。上から下までじっくりと観察し、また溜息をついた。
「暗い未来しか想像できねえんだけど」
「割と合ってる」
「割と」
「とりあえず独身」
「やだ死にたい。俺氏、ちょっと本気で結婚相手探せよ」
「うーん」
 キリコは煙草を咥え、火を点けながらBJを見る。ピノコを膝に乗せて黒男の質問に答える姿はいつも通りで、うむ、今日も可愛い、大変よろしい、でも絶対嫁には向かない、と実感してから言った。
「お前が言うな」
「何それ」
「同性婚は現代でも厳しいぞ」
「……いや、何つうか、なあ……」
 軍医は決まり悪そうに口の中で呟き、黒男に目をやる。キリコは知らん顔だ。昔の自分の棚上げなどすぐに叩き落としてやる。若気の至りを目にして恥ずかしいのだ。
「まあ、性別以外でも人生山あり谷ありだ。頑張れ」
「どんな山と谷」
「死ぬこたあない」
「全然安心できねえ……」
 盛り上がらない会話をする死神と軍医をよそに、モグリの天才外科医と苦学生は大いに盛り上がっている。黒男青年への警戒を解いたピノコがお茶の支度をしに席を外すと更に専門的な話が始まった。黒男の質問にBJが答えるという形になっている。
「あーそうそう、いけるから。心臓まで2分、余裕」
「余裕ですかい!?」
「余裕。これ、こうやって」
 いつの間にか取り出したノートに図解を書き、BJが説明する。黒男は熱心にそれを覗き、ああそうか、ああ、うん、と何度も頷いていた。
「ここでドンってして、こっちでさっくり」
「あ、そうか! で、こっちはぎゅって感じ?」
「そうそう。ここまでで1分で。もうこっちはざくってやっちゃって」
「なるほど、やっちゃって」
「で、ここで金魚の」
「ああー!」
 よし分からん。軍医は心から分からない。
「俺氏」
「何だ」
「あのねえちゃんの説明、俺はさっぱり分かんねえ。自信なくしていい?」
「天才の説明なんか天才にしか分からん。自信持っといていい」
「つまり俺氏も分かってない」
「分かろうって気にもなれねえわ。──おい、手伝え」
 煙草を揉み消し、若い自分の背を叩く。
「何をだよ」
「テラスの修理。若いお前さんに適任だ」
「はあ?」
「先生、──お嬢ちゃん、テラスの修理するから俺とこっちの俺のコーヒーはあっちに持って来てくれるかい」
 医学の話になると他のことを一切遮断するBJの代わりにキッチンにいるピノコに声をかけ、何で俺が、っていうか何で俺氏が、と納得のいかない軍医を引っ張ってテラスへ向かった。

「俺氏」
「何だ」
「汗水垂らす俺を優雅に座ってコーヒー飲みながら見て楽しいか」
「非常に楽しい。そして俺はそういう作業が昔から大嫌いだったことを思い出して懐かしい」
「つまり俺が嫌いだということも良く知っていると」
「そういうことだな」
 海風で傷んだテラスの手摺りを修繕する軍医を眺めつつ、ピノコが運んでくれたコーヒーを味わう。素晴らしく美味い。昔は苦労したらしいが、キリコが知る限り彼女の家事能力は抜群だ。
「ロクター、ピノコはお夕飯のお買い物に行くわのよ。ちぇんちぇいに言っといてなのよさ」
「一人で? 俺も行こうか?」
「ロクターはテラスを直すのよさ」
「全力でやっておくよ。じゃあ気を付けて」
「あらまんちゅ!」
 元気に返事をし、有能すぎる幼女は意気揚々と家を出る。無論全力でテラスを修繕しているのは死神ではなく軍医だ。
「大体、何で俺氏がこの家の日曜大工なんてやってんだよ。今は俺がやってるけど」
「男手が増えたと思った途端に俺の仕事にしやがったんだよ」
「ねえちゃん?」
「そう」
「同棲してるんだよな?」
「してない。俺は開業してるからそっちに住んでる」
「え、本当に? 俺が開業するのか」
 意外そうな、だが少し嬉しそうな顔をした軍医に、死神は眉を顰めて笑ってみせた。その笑い方で何かを察した若いキリコは言葉を失い、しばらく黙り込んだ後、息を吐いて作業を再開した。
 居間の方から楽しそうな声が聞こえる。医学の話から世間話になったようだ。借金全部返し終わるから平気平気! とモグリのぼったくり女医が励まし、まじか、よかった、俺いつか臓器取られるかと思ってた、と安心する苦学生の会話はどうにも不穏なのだが、二人が楽しければ良いとし、死神は新しい煙草に火を点けた。軍医も手を休め、テーブルにあった自分のコーヒーを取って座る。
「本当に開業するのか」
「するよ」
「専門は?」
「生命」
 軍医はまたしばらく黙り込む。広がる海を眺め、目を細めて、それから「ふうん」と言ってキリコの煙草の箱に手を延ばし、一本抜き取って火を点けた。未来の自分の答えに満足したわけではないが、迷うことなく「生命」と答えた声に満足し、どこかで納得した。
 不愉快ではない無言の中、居間からは相変わらず楽しそうな声で不穏な話が聞こえる。軍医はとんでもねえなと苦笑し、死神は通常営業だと笑いもしなかった。
「まあ、ちょっと忙しくて返済が間に合わなかった時もあったけどさ、何とかなったし」
「遅れたらやばいだろうに。私さん、何もされなかったんですかい?」
「ハードSM趣味のオッサンに一晩売られたけど、それで遅延分チャラだったからね。まあいいさ」
「何それ!?」
 黒男が驚愕し、さすがに死神と軍医もコーヒーを噴き出して振り返る。当のBJはけらけらと笑い、それがさあ、と楽しそうに続けた。
「すんげえ悪趣味でマゾのオッサンでさあ。私みたいなツギハギ女に(自主規制)されて(自主規制)られて言葉責めされるのが夢だったんだってさ。(自主規制)なのは別にいいんだけど、言葉責めのバリエーションが尽きそうで大変だった。プロの女王様ってほんと頭いいや、私は一回で懲りたよ。もう返済遅れなんて絶対するもんかって思ったね」
「何それ、面白すぎてちょっと待って、腹痛ェ!」
 男子学生らしい笑い方で腹を抱える黒男と、当時を思い出して大笑いするBJを交互に見やり、死神と軍医は茫然としたままコーヒーで汚れた口元を拭い、どっちもまともな感性じゃねえ、知っていたつもりだったがやっぱりたまに辛い、と同時に思っていたのだった。

 それからまた軍医はテラスの修繕に戻り、死神は監督気分であれこれ指示を出す。一度軍医が「俺氏もやれよ」と怒ったが、死神が「片目じゃやりにくくて」と言った途端に文句を言わなくなった。俺はこういう奴だった、と死神は彼の青臭さに苦笑する。ハンディを持つ相手に強く出られない頃だった。今はそうでもなく、出来ることならご自分でどうぞ、という考え方だった。もちろん軍医にそんなことを教える理由はない。間違いなくじゃあ修繕をやれと言われるからだ。
 しばらくすると、いやに居間が静かになったことに気付いた。海風の音が耳に痛いほどだ。どうしたんだと振り返り、そして思わず叫んでいた。
「坊主、何してんだ!」
「──ねえちゃん、そりゃねえぞ!」
 死神の声に驚いてやはり振り返った軍医も、その光景を見て叫び、死神と共に居間に駆け込んでいた。坊主とねえちゃんは二人の乱入に驚いて顔を向け、それから示し合わせたわけでもないのに不快げな顔をしてみせる。
「何って、見ての通り。俺くんに貸したげてるだけ」
「うん。私さんに借りてるだけ」
「貸し借りするものじゃありません! 坊主、いいから手を離せ!」
「ねえちゃん、自分を誘うのってどうかと思うの!」
 死神と軍医の嘆き、むしろ怒りは最もと言えば最もなのだ。
 BJがリボンタイを解いてブラウスを開き、下着まで外して惜しげもなく晒した胸を黒男の両手が包み込んでいた上に、明らかにその指が柔らかな乳房をまさぐっているのだから。
「俺、乳房の触診ってあまりやったことなくて。苦手だし。そしたら私さんが貸してくれるって言うから」
「私も苦手だったから気持ちは分かるし。だから俺くんに貸してただけなんだけど。おまえさんたち、うるせえよ。実習の邪魔すんな」
「ここでやる方がおかしい、って言うか絵面がおかしすぎて俺の脳が付いて行かないんだよ!」
「早漏のくせに脳の回りが遅いんだよ、馬鹿キリコ!」
「早漏じゃねえって知ってんだろうが! いいから! 胸を! しまえ!」
「え、俺氏さんって早漏……」
「違う!」
「ツギハギくん、俺を見て比べるのやめなさい! 俺氏にもプライドがあるから!」
「違うって言ってんだろうが! お前さんと変わらん!」
 どうしてこんな話になるんだと本気で疑問に思いつつ、そして本気で否定しつつ、とりあえずBJの胸をしまう。
「え、軍医のキリコってどうなの。私、軍医時代のキリコとやったことないから知らない」
「あ、やってないんだ?」
「途中までしか。時間なかったから」
「その辺は俺たちと違うんだな。こいつは結構長い。俺、たまに疲れて嫌んなる」
「うわ、むしろサイテー。長すぎると早く終われってなるよね」
「あー、分かる。ほんとそれ」
「でもさ、レイプされた時は早漏のがいいよ。さっさと終わるもん」
「あー、それも分かる。ほんとそれ。何人もいると本気で早漏が有り難いよな」
「そうそう。まあ、ああいう奴らって大抵早漏だしなー」
 だからどうしてこんな話になるんだと本気で疑問に思いつつ、そしてこんな話を世間話としてさらりとしてしまう二人に虚無感さえ覚えつつ、死神は「この話おしまい、俺は早漏じゃない!」と無理矢理幕引きをし、軍医は黒男を抱き締め、そんなことあったの、可哀想に、とおいおい泣いてしまったのだった。