忘れた理想
眠れないので書いた。自作品のエピが入っているので分かりにくかったらすみません。スマホから書くのは慣れないからか手がむくむ。PC使えないけど書きたいって時には助かる存在なので使いこなしたい。根っこがアナログ人間なのかもしれないと自問自答する程度にはスマホが苦手。
紆余曲折と言えば紆余曲折、だが二人を昔から知っている連中は「ああ、やっとか」と納得する程度には既定路線だったのかもしれないし、そうじゃないかもしれないし。
二人の中では確実に紆余曲折。
途中から意識した、すごくした。確かに。実はベトナムから好きだった(手は握った)、それから恋人ごっこ(キスまで)、恋人ごっこをしている振りの本気(お互い自覚ある両片思い)、意識したなんてものじゃなかった。
それなりに確実に紆余曲折。そんなこともあったなあ、と昔なら考えられなかったシチュエーション、自分の家でBJと食事をしながら思い出していた。
テレビで心臓移植のニュースを見たからだろう。二人がふたりになるべきだと思い知ったのは、心臓移植を必要とする患者を挟んだ時だったのだから。
「思い出してた」
酔って機嫌を良くしたBJが、食後、ソファでキリコの肩に甘えながら少し笑った。
「うん?」
「ソフィアの時のこと」
「──俺もだよ」
偶然だ、と二人で笑って軽くキスをする。するとBJは笑い続け、いかにも酒が過ぎた女の間抜けで甘ったるい声で話した。
「理想の恋愛とは全然違ってたはずなのに」
「言うねえ。どんなのが良かったんだよ?」
酔った女の戯れ言に、キリコはからかい9割、不満1割の笑みで頬をくすぐる。くすぐったいと楽しそうに嫌がって、BJはまた甘ったるい声を零した。
「忘れちゃった」
「忘れた?」
「うん。確かに、理想の恋愛って、あったはずなんだけど」
今が最高に素敵だから、忘れてもいいやつだったみたい。
そう言って笑う女の可愛いこと、可愛いこと。
「参りました」
「何なに」
「おまえが可愛すぎて辛い」
「なーにー」
本音を吐いて抱き締めて、また機嫌をよくする女にキスをして、──そこで脱がさないほど俺は出来た男じゃないんだ、とキリコは自分で自分の欲に納得する。
「キリコは?」
アルコールのせいか、脱がされる感触をいつもより楽しみながらBJはキリコを見上げる。ひとつだけの青い瞳の中に映る自分がやけに綺麗に見えて、ああ、わたし酔ってるなあ、と思ってまた笑った。
「何だよ」
「キリコの理想の恋愛は、どんなの」
「そうだなあ」
ブラウスのボタンを外す手を止め、キリコは少し考える。だがすぐに笑い出した。
「俺も、忘れていいやつだったみたいだ」
思い出せやしない。そう言って笑う男にBJはいかにも酔った女の素直な声で喜び、男に思い切り抱きついて、思い切りキスをして、思い切り甘くねだった。──早く抱いてよ、うんと甘くしてくれなきゃ嫌。
男に異論があるはずもなく、可愛い、俺の、といつもの言葉をいつもより早く囁く衝動を抑えきれない。
思い出せないなら今が理想でいいじゃないかと思いながら、理想の恋愛相手の要望に応えるべく、この上なく甘く抱いたのだった。


最近のコメント