cat nap

SSとか

キリコがうたた寝しているだけの話。catnap=寝落ち。別ジャンルのサイトの大量のhtmlを編集をしていたら気が狂いそうになったので脳の小休止のために書いた。

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 昼食の後、本を読んでいたのにいつの間にかうたた寝をしていたようだ。浅い眠りが心地よく、それと同時に動くのも億劫で、リビングに入り込む海風が優しく頬を撫でてくれているのをいいことに、キリコは覚醒と夢の間を微睡みながら楽しむ。普段はBJが座る揺り椅子も、いつの間にか勝手に使うようになっていた。それを咎める者は無論いなかった。
 微睡みは意識を眠りの国に向ける割に、五感は現実へ向けようとする。ああ、長くは微睡めないな、とやや残念だったが、最後まで夢現の感覚を味わいたい。
 誰かが小さな声で話している。何を話しているかはよく聞こえない。だがくすくすとたまに小さく笑い声を上げ、それはとても可愛らしい。三人がそこにいる。気付いたキリコは穏やかに満足し、愛する女と恋敵、妹が自分を起こさないように気を遣ってくれているのだと知った。
 気遣わせるのも悪いと思い、微睡みを諦めて目を開ける。まだぼんやりと霞がかった意識の中、ひとつだけの目でもよく見える、キリコが好きな光景がそこにあった。眠気が振り払えないことと、そしてその光景をしばらく眺めていたくて立ち上がらなかった。
 夏の間は使わない暖炉の前に座り込み、客間と言う名のキリコの部屋から持ち出したのであろうスカーフを開いて小声で話し、そして小声で笑う女たちが可愛い。思わず口元が緩むが、女たちはこの家の唯一の男が起きたことに気付いていないので見られることはなかった。
 ね、これ、そう見えるでしょ、と産まれた時から愛している妹が言う。そうそう、そうなのら、と恋敵として敬愛する女がやや興奮したような、だが精一杯小さな声で言う。そしていつから愛しているかも覚えていない女が静かに笑い、ああ、可愛いな、と心の底から思った。
 恋敵がスカーフを広げて髪に被り、およめさん、と得意げに言った。似合うわ、素敵よ、と妹が褒める。愛する女はまた静かに笑った後、誰と結婚するんだ、と言って、ちぇんちぇいれしょ、と彼女の愛する娘を怒らせていた。女同士でもいつか結婚できる時代になると教えられた、と恋敵がかつてロンドンで言っていたことを思い出した。
 そして恋敵はスカーフを自分の髪から外し、うふふ、と笑いながら愛する女の髪の上に置いた。ちぇんちぇいと結婚するときは二枚いるのわよねぇ、と恋敵は言い、妹も笑い、愛する女は少し考えた後、なるほどね、そうだね、と言ってやはり笑った。それから三人で声を揃えてまた笑った。
 ああ、可愛いな、と思った。
 心地よい海風が吹き抜けるリビングで、産まれた時から愛している妹と敬愛する恋敵、そしていつから愛しているのかも覚えてないほど愛している女が可愛くて可愛くて、ああ、幸せだな、と思いながら、いつの間にかまた眠ったことには気付けなかった。

SSとか

Posted by ringorira