キリコが膝枕をしている話
キリジャ♀でまったりしてるだけ。数百円のハンドクリーム=ニ●アあたり。キリコにドゥ●メールを買ってもらうといい。あと私が書くキリコは隙あらばやろうとするので年齢を考えるべきかもしれない。
こいつが俺の家で眠り込むことはそれ程珍しいわけじゃない。気が付けば寝ていることもある。
基本的にこいつは俺とふたりきりの時にはよく眠る。最初は意外に思ったものだが、日々の緊張を俺の前で解しているのだと知ってからは放っておくことにした。
問題は膝に甘えている時に眠り込まれた時だ。恋人同士らしく(そして年甲斐もなく)じゃれている時、膝に甘えたこいつがやけに静かだと気付く頃にはもう遅い。俺の膝はこいつの枕になる。たまに涎を垂らすことには閉口するが、生物として仕方ないので責めない。
膝を占拠されると俺の行動選択が限られる。まず立ち上がることは論外。となるとテレビでも。音で起こすとまずいので却下。手元に本があれば読むが、それまでじゃれあっていたのだから大抵ない。飲み物。コーヒーカップが置かれたテーブルに手を伸ばす動きで起こす可能性、つまり却下。煙草なんぞ論外中の論外。灰が落ちたらどうする。
要は何もできない。起きるまで忠実な膝枕以外の行動が許されない。起こせばいい? 俺にはできないし、そもそもそんな選択をする男が理解の範疇を超える。
よって眠り込むこいつを観察するしかない。ソファの背もたれに思い切り寄りかかって寝顔を見る。俺の膝に着けられている頬は起きた時に服の皺の跡がついているだろう。それも可愛いし、指摘すると恥ずかしがって怒るのも可愛いので先の楽しみがひとつ確定。
ぼってりした可愛い唇は半開きで、規則正しい寝息が聞こえる。この角度だとそのうち涎で俺の膝が湿るだろう。繰り返すが生物だから仕方ない。だが着替えを要する。時間帯によっては膝を濡らした罰という名目でこいつも脱がそう。仮の予定とする。正直言っていつ何時脱がしてもいいのだが、俺にも俺への体裁が必要だ。
頭の重量はそれなりに。人間の頭蓋骨の重さは体重のおよそ6分の1とされる。自己申告によるとXXキロ、となると膝の上の重さは──……いや待て、昨日抱き上げた時に少し重くなっていたな。やっぱり後で脱がそう、改めて抱き上げて計り直す。
言うことを聞かせることすら諦めているらしい、癖のある髪の毛は清潔で健康だ。ふたりになる前に比べると少し伸びた。俺がロングヘアの女が好きだとユリに聞いてからいじましく伸ばしているらしい。可愛い。伸ばし始めた頃に白状した時の顔を思い出すだけで可愛い。後で抱く。理由ができたので俺への体裁はもはや不要、捨てておく。
ちなみに白状させた時、おまえなら長くても短くても好きだよ、可愛いよ、と本音を言ったら照れすぎてパニックになっていた。あれも可愛すぎた。思い出したので後で抱く理由に付け加える。
睫毛が長い。そして多い。伏せた目元に影が落ちるほど。あのユリが本気で羨ましがるスペックだ。冗談でマッチを載せたら落ちなかった時、俺は唖然とし、ユリは真剣に羨んでいた。
肌はろくな手入れをしていない(数百円のハンドクリームを塗っているところしか見たことがない)が、アジアン独特のきめ細かさが際立つ。煙草をやめればもっと綺麗になるだろう。こいつが禁煙となると……いや、厳しいな。病んだ女の依存先のひとつを減らすのは相当の覚悟が必要だ。
そろそろ膝が痺れて来た。かつ、明らかに涎と分かる湿りが布地に染みる。自然に起きるまで待つか、起こすか。30分程度眠っているし、一度起こしてもいいだろう。完全に痺れるとその後の予定──とりあえず脱がす──に支障をきたす。
「マフィン」
いつものペットネームを呼んで軽く身体を揺すぶる。初めてこの呼び方をしたのはまだ二人がふたりになる前、直前だった。何となくそのまま定着した。クロオ、と呼ぶことより多いかもしれない。尚セックスの最中にクロオと呼ぶとかなり効く。こいつに滅茶苦茶効く。どう効くかは想像力に一任する。
「もう起きろよ。随分寝てる」
30分程度で随分と言うかどうか。俺の膝が随分と言えと言った気がしたから随分でいい。
長い睫毛が震え、唇から吐息が漏れる。可愛い。もう起きるだろう。さて、寝ぼけている間に脱がせるか、少し眠気を飛ばした頃に脱がせるか──
「んん──」
「っ、おい」
くだらない、だが重要な手順について考える俺の膝から不意に頭がずれ、身体ごとソファから落ちそうになったBJを抱えるように抱き留める。ベッドと間違えて寝返りをうとうとしたんだろう。
「大丈夫か」
BJは答えず、きょとんとした顔できょろきょろと周囲を見回した。まだここがリビングのソファだと分かっていないらしい。
だがやがて息を吐き、なぁんだ、と言いたげな顔になった。可愛い。よし脱がす。
「……おい」
脱がす、と思った俺の前で、あろうことかBJは再び俺の膝に頭を乗せた。今度は寝やすくするために最初から楽な姿勢を取るほどの念の入れよう、睡眠への本気度が窺える。
起きろ、いい加減にしろ、と声をかけても既に寝息しか聞こえない。頬を撫でたら気持ちよさそうに寝顔が崩れただけだった。可愛い。
仕方ない。俺の膝は今少し忠実な枕として存在することしか許されないようだ。
またソファの背もたれに沈み、それから好きな女の髪を撫でた。もう眠り込んだ女は反応しなかったが、それも可愛かったからそれでいい。
ただし膝のレンタル代として、起きたら脱がす。最初からそのつもりだったが更に強く決意する。
それまでひどい痺れは勘弁してくれよ、格好よくやりたいんだから。既に痺れかけている心もとない膝に願い、俺はまたしばらく好きな女の寝顔の観察と、起きたらどれくらい気持ちよくしてやろうか、その手順を念入りに計画することにした。


最近のコメント