死神は本命にだけ不器用なんだ

SSとか

いつも以上に推敲とかしてないです。すみません。キリコが情けなくも先生をやたら愛し抜いている一面って感じでしょうか。酒を飲んでいまいち意識はっきりしないけど何か書きたいな と思って書きました。最近酒に弱くなっているので色々と考え時だと思っています。

 一回りも歳が離れた女が恋人だ。傍から見れば好奇の目を受けて当然かもしれないが、俺たちにはあまり関係がないことだった。
 喧嘩もよくする。大抵はあいつの我儘の度が過ぎて俺がそれを拒否する。普通ならここで喧嘩になるんだろうが、俺たちはもう少し面倒だ。拒否されたことで自分の我儘に気が付いたあいつが、調子に乗り過ぎていた、わたしなんか、と自己嫌悪になる姿を見て、俺が俺に怒るのだ。そしてそれを知ったあいつが、どうしてわたしなんかのことで自分と喧嘩するの、と言って、俺がまたそれに腹を立てて結局あいつ自身と喧嘩になる。
 わたしなんか。その言葉を聞くたびに俺は胸が痛い。そんなことを言う必要がないといつまでも分からせてやれない自分に腹が立つ。
 度重なればストレスになる。俺はPTSDの症状が出ない限りセルフコントロールが得意な方だが、あまりにも回数が重なれば、これは本当に正しいのかと疑問を持たざるを得ない。これは──この恋愛は本当にあるべき姿なのか、それとも相手への愛情で目が眩んで、現実の困難を乗り越えることから目を逸らしているのではないかと。
 そんなことまで考えそうになる自分が危機的だと、本当は分かっている。あいつは俺の最後の女で、俺はあいつの最初で最後の男だ。何がどうなろうとそうなんだってことは、二人がふたりになる前から本当は分かっていることだった。
 その真実に──真実にしようと自分で決めたことに──疑問を抱いてしまうほど、今の俺はあまり良い状態ではない。おそらく立て続けの仕事のストレスが影響している。あいつだって忙しい。互いにベストなコンディションではない、そんな時に喧嘩をしてしまったのが悪かった。それだけの話だ。
 今はお互いに良くないコンディションなんだ、少し深呼吸をしよう──喧嘩をしてそう思えて、俺はBJに話をしようと思った。BJが閉じこもっていた部屋のドアの前に立つ。
 ノックしようとしたその瞬間、ドアがゆっくりと開いた。
 ああ、悪いことをした、と俺は後悔した。
 ドアを開けたBJが──あの天才外科医からは想像できないような、泣きべそをかいた顔なら後悔せざるを得ないだろう。一回りも歳の離れた女を泣かせるなんて。可愛くて仕方ないのに、いつも可愛い可愛いと言って嬉しそうな顔をさせているくせに、たかが喧嘩で泣かせるなんて。
「キリコ」
 泣きべそのくせに、精一杯平静を装った声を出そうとするなんて。
 そんな声を出させるなんて。
 俺は何て駄目な男なんだろう。
「考えたんだけど──わたしがよくなかったと思う。ごめんなさい」
 何を言えって? 俺はたまに、そう、こんな時、どうしたらいいのか分からなくなる。
 可愛くて愛しくて、こんなことを言わせたことが申し訳なくて、それでも可愛くてたまらなくて、一体どうすれば全ての感情を伝えられるのか分からなくなるんだ。
 だからいつもできることは同じで、我ながら情けなくなる。でもそれしかできないんだから仕方ない。
「ごめんね。俺が悪かった。──泣かないで」
 どんなに歳が離れていても、愛しくても、可愛くても、俺が情けなくても。
 俺にできることなんてほとんどない。だからできることをするしかない。
 抱き締めてキスをして、愛しているよと伝える以外、何もできない俺はとんでもない無能な男だ。
 だがそれで俺の腕の中で安堵の息を吐いて、わたしも、愛してる、とBJが言えるなら、言ってくれるのなら、今この瞬間だけは有能だと思える、そんな不思議な恋愛の形。

SSとか

Posted by ringorira