その後のオリキャラ組(途中まで

2019年9月2日書きかけとか

「こんなふうに」のラストのその後。最後まで書くかは微妙だけど今ちょっと次の話を書くのに迷ってるから起承転結無視で続けるかも。というあやふやな感じ。グラディスとアンディです。ユリさんも出ているので最終的には先生たちも出るんですかね。

「まさかイギリス陸軍の男性を連れて来るとはね。師団は──失礼、お国の言い方が分からないものだから」
「あっちも師団って言うんじゃなかったっけ」
 中将である父の言葉を補完し、グラディスは旧知と言えば旧知、たまになぜか電話で世間話をする相手をちらりと見る。アンディは作った笑顔の引き攣りを隠せたかどうか不安なまま、新しい恋人に伝えてある身分を彼女の父と母、弟と娘の前で言うことにした。言わざるを得なかった。 
「そうですね。師団と言います。自分が所属しているのは第101補給旅団になります」
「補給旅団」
「そうですね、補給旅団です。第三師団を援護しています」
「ふうん」
 全てを知っているグラディスの前で笑顔を保ち続けることの何と困難なことか。ファミリータイプの豪華な部屋のテラスで、まずは男同士の挨拶──と言う名目の面接──という状況の中、いっそ少佐が全部ぶちまけてくれればいいのにとまで思う。アメリカ陸軍中将が父親だと言うのなら、ある程度は理解されるはずだ。その後に娘との交際そのものを握り潰そうとする可能性はあるが。
「その頬から唇の傷は? 戦傷だろう。我が軍なら勲章物の怪我だよ」
「あ、いえ、これは──」
 冷や汗と脂汗が同時に出る経験をあまりしたことがない。これなら昔、潜入作戦に失敗し、感染症覚悟で泥水の中を這いずり、自分を探す敵軍の中を突っ切ったことの方が怖くない気がする。
「ええ、その──戦傷です」
「父さん、そういうことは聞かない方がいいよ。父さんの部下じゃないし、イギリスの人なんだから」
「ああ、そうだな。軍曹、大変失礼した。きみは息子と同じ歳なんだって? 良かったら仲良くしてやって欲しい」
「──はい、光栄です、はい、とても!」
 そう答えるしかないこの状況下、アンディは必死で笑顔を保っている自分が素晴らしい男だと信じてやまなかった。だがそのわずか数秒後、煙草を咥えたグラディスがあっさりとアンディを叩き落とす。
「アンディ、顔を合わせた記念に飲みに行かないか。姉さんをどうやって落としたのか聞いてみたいし。同盟国なんだもの、仲良くしようよ」
 ねえ、とグラディスはにっこりと笑ってくれる。アンディは頷く以外の選択肢がないことをよく知っている。──きっと色んな女の子を一瞬でいい気分にさせちゃう笑い方だよなあ、でも俺は全然いい気分になれないや、むしろ怖い。
「パパ、ギィ、いつまでもアンディを尋問しないで頂戴。──もう、ギィ、煙草はやめて」
 面接にしては長い時間を過ごす男たちに痺れを切らし、アンディの恋人を自認する美しい女性が顔を出す。姉のグレイスの登場で、グラディスはしかめっ面をして火を点けたばかりの煙草を揉み消した。
「ごめんね、アンディ。うちの男の人たちったら根っから軍人なんだから。ギィなんてパパのお陰で出世しただけなのに勘違いしちゃって」
「え、いや、少佐が!? お父さんのお陰だなんてそんなことないと思うよ!?」
 恋人のあまりの認識に、思わずアンディは場にそぐわない大声を出してしまった。グラディスがまじまじとアンディを見た後、父に視線を移す。父は一瞬だけ厳しい目をし、それから穏やかに息子に告げた。
「煙草を吸いたいだろう。アンディと話すついでにどこかで吸って来るといい」
「そうするよ。アンディ、行こう」
 行こうと言いつつ、アンディの耳にはなぜか「来い」としか聞こえない。──俺はSASの隊員であってデルタの人間じゃない、だからこの男の言うことを聞く必要なんかない。そうだ、目の前にいるアメリカ陸軍中将だって。下手に出る必要なんかどこにあるって?
 それは意地だ。プライドだ。俺だって──だがそのプライドはテーブルの下、立ち上がるついでに思い切りつま先を踏ん付けた赤毛の少佐の足によって打ち砕かれたのだった。
「……行きます」
 隊長、プライドを貫けなくてごめんなさい。俺はSASの面汚しです──バカンスの土産話を待っているよと言ってくれた海の向こうの上司に、アンディは心から謝罪した。そしてつま先が痛い。

 連れて行かれた先はひどい場所だった。ひどいとしかアンディには言えなかった。いや、むごい、でもいいかもしれない。
「にいさんと先生から聞いたの。来るんじゃないかって予想はしてたから、驚いてあげないわ」
 ドアを開けてくれた銀髪の女性は驚くほど美しく、にんまりと笑ってグラディスを挑発するように言う。グラディスは「場所代」と言って、グレイスがワシントンから持って来た焼き菓子の包みをユリに差し出す。
「気が利いてるじゃない。入っていいわよ。どうせ二人が来るだろうから、メイン寝室以外は好きにさせていいってにいさんと先生が言ってたわ」
「ドクターと先生がそんなこと言ってたの? あの馬鹿夫婦、そういうところがむかつくんだよ」
「わたしの前で二人を侮辱しない方がいいわよ。──初めまして、あなたがアンディ?」
「どうも」
 状況が飲み込めないながらも、「ドクター」「先生」と言う言葉で、ここがどれだけひどい場所なのかを簡単に想像できてしまう自分が嫌いではない。だが逃げ出せない自分は嫌いだ。
「わたしはユリよ。ドクター・キリコの妹で、看護師」
「──妹?」
 言われてみれば顔立ちが似ているし、欧米人でもあまり見かけない美しい銀髪も彼と同じ髪質だ。あの人に家族なんていたんだ、となぜか思ってしまった。
「ユリちゃん、パティオ貸りるね」
「どうぞ。ミニバーはピノコちゃんのソイミルク以外、何でも飲んでいいって言ってたわ。でも妹として忠告させてもらうと、飲んだ分は絶対請求が行くと思うわよ」
「このブリテン野郎にツケておくよ。ドクターたちならこいつの連絡先も職場も知ってるはずだから、そっちに回してって言っておいて」
「ブリテン野郎って言うのやめて下さいよ、少佐」
「ああ?」
「何でもないっす、すんません……」
 俺は何も悪くない。アンディは本気でそう思う。だが低い声で睨み付けて来た赤毛の男の目付きが人を殺さんばかりのもので、あっさり謝罪を選択した。
「ねえ、わたし、聞いちゃ駄目かしら」
「理由は?」
「興味本位。他に何があるのよ」
「勝手にして。その代わり、ちょっと軍の話もするからね。知りたくないことを知っても責任は持てないよ」
「セルゲイが殺された時の話でもしてあげましょうか」
「脅しにもならねえよ、ビッチ」
 ユリの前では珍しく不機嫌に口汚く呟き、ミニバーからミネラルウオーターを失敬する。ユリに勧められたアンディも同じものを取り、先にパティオに出たグラディスを追った。この女の人は随分少佐に強い口を利くけどどういう関係なんだろう、と思いながら。
「とりあえず」
 ユリが自分のライム果汁入りの炭酸水を持って座ると同時に、グラディスは煙草に火を点けて、早々に話を始めた
「姉さんとの今後のことはどうでもいい。確認したいのはきみの意思かどうかってこと」
「俺の意思? 何ですか、それ」
「父さんと僕のことを知って、上に何か言われて姉さんに近付いたんじゃないの」
「いや、違いますよ。──違いますよ、それはないすよ!」
 グラディスが言った意味を理解し、アンディは思わずやや大声を上げていた。特殊部隊員としては失格と言われてもおかしくない反応だが、偶然にも、だからこそ真実だと証明できた。グラディスはしばらくその言葉を吟味していたが、やがて次の質問に移る。
「きみの本当の身分を姉さんに言っていないね。父さんの前でも補給旅団で誤魔化すつもりだったのか」
「それは、あの──」
 ユリを一瞬見たアンディにグラディスが溜息をつく。
「ユリちゃん」
「なあに」
「どうせこいつの仕事もドクターたちに聞いたんでしょ?」
「イギリスの特殊部隊──SASって言うんですんってね。そこの軍曹さんだってことと、ホワイトハウスで先生を助けてくれたってことは聞いてるわ」
 ホワイトハウスと聞いた途端にグラディスが笑い出し、アンディは恥じ入るようにテーブルに突っ伏す。BJを助けるどころか助けられた身としては、BJの温情とも言える説明の仕方に感謝するばかりだった。同時に、少佐なんて俺よりやばいことになって死にかけてあの二人に世話になったじゃないすか、と言ってやりたくなる。言った瞬間に額を撃ち抜かれそうで言えなかった。赤毛のデルタ隊長がジャケットの下に銃を隠し持っていることなどとうに見抜いていた。
「ってことで、ユリちゃんの前で何言っても平気だから。素直に答えな」
「グレイスには本当の職務を言ってないし、これから言うこともありません。あと、誤魔化そうとしたわけじゃなくて、ほらもう──少佐なら分かってくれると思うんすけどね!」
「分かるさ。大抵は特殊部隊員なんて家族にも言わないんだから。──でもね、身辺調査しないわけがないだろ、僕の父親が。多分もう本国の部下に連絡して、きみの身元の洗い出しにかかってるよ。僕にも探って来いって意味で追い出したんだし、きみがクソSASって知られるのは時間の問題だ」
「……バレたらやばいっすかね、やっぱ……」
「やばいも何も、多分もう大体気が付いてる。きみが姉さんに真面目に反応するから怪しまれたんだよ」
「グレイスに?」
「姉さんは僕が親父の七光りで出世したとしか思ってないし、僕がデルタってことも知らない。まともに反応しやがって、馬鹿かな。死ねば?」
 もはや耐え難かった。己のミスを心底呪い、あああ、と呻いて再びテーブルに突っ伏す。ロンドンで年上の旅行者と出会って恋に落ち、家族に紹介したいからと言われてわざわざフランスまで来た結果がこれとは。グレイスとの交際を真剣に考えているからこそ絶望が酷い。
「下手すりゃ米英間の軍事関係が話し合いになる内容だよ。っていうかさあ」
 今度はグラディスが絶望の顔になった。
「多分、おおごとになる前に隊長間で話し合えってことにされると思うんだよ。──僕とあの人、つまりきみのとこの隊長でまず話し合えって言われる。もう考えるだけで嫌だ。無線でしか話したことないけど、僕とあの人、絶対お互いに一番嫌いなタイプ」
「あ、そうすね……すげえ分かる気がする。うちの隊長、少佐みたいなタイプって絶対嫌いっすよ」
「はっきり言うなよ、ムカつく」
「だって本当だし」
「ったくもう」
 グラディスは深く溜息をつき、急に年齢相応の青年の顔と声になった。
「この間電話した時、女ができたなんて全然言ってなかったくせに。何で言わねえんだよ、もう」
「違うって、だから、まだあの電話の時には付き合ってなかったんだって。まじっすから、これ。大体あの電話ってドクターが不能かもしれないってネタ電話だったしさあ──って言うか、少佐、何でドクターが不能って知ってんの?」
 グラディスと同様、アンディも仕事と立場を忘れた顔になり、やや階級差は拭い切れないものの、同年齢の男友達の声音になった。聞いていたユリは「二人とも可愛いとこあるのね」と思いつつ、それにしてもにいさんが不能ってどういうことかしら、と真剣に悩みそうになったのだった。

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隊長(SASの方)が出る流れですかねこれ。
まだあの人の名前を決めていないのでまずはそこから。